アスカは車から降り立つと、目を大きく見開いて旅館の表玄関を見つめた。
 そこはテレビで見るような豪奢な門構えではない。
 寧ろ惣流家の門の方が大いに立派なことこの上ないと言いきれる。
 しかし、そこには得も言われぬ趣というものがあったのだ。
 まずは表玄関の前に和服の女性が二人立っていたことが大きかろう。
 一人は女将で年の頃なら六十手前。
 もう一人は若女将で、若いといってももう四十歳前後か。
 しかし格式ばったところは少しもなく、玄関のところでみなが降りてくるのをにこやかに待っている。
 ワゴン車からぴょんと飛び降りたアスカはその二人と真正面から目を合わせたのだ。
 すかさず頭を下げられたアスカは対応に一瞬途惑った。
 だが彼女のことだ。
 すぐにいつもの笑顔でむんずと地面に足を踏ん張った。

「こんにちは、アタシ、アスカ!」

「まあまあ、いらっしゃいまし」

「いらっしゃいました!」

 こつん。
 頭を小突かれて、アスカは唇を尖らせて斜め後ろを振り返った。
 
「こら、アスカ。そんな挨拶はないでしょう」

「ぐふう、じゃなんていうのよぉ」

「お世話になりますって言うのよ」

 多分、という言葉は飲み込んだ。
 何しろキョウコにとっても初めての温泉旅行なのだ。
 ただこれまでの日本での生活の上で、そうではないかと思ったのである。
 母に囁かれて、娘はそうなんだと頷く。
 アスカはしゃんと背筋を伸ばし、にんまりと笑い、そしてぺこりと頭を下げた。

「おせわになりますっ!」

「なります」

 いつの間にかアスカの隣に立っていたレイもすかさず一緒に和した。
 二人の幼女に頭を下げて挨拶されれば、受ける方としては微笑ましく思わぬわけがない。
 この時は仕事ではなく、子供を育ててきた母親として心から笑顔になったのだ。

「まあ、可愛い。精一杯お世話させていただきますからね。楽しんでくださいよ」

 若女将の言葉に女将も大きく頷く。
 この時、子供用の料理が予定より二品増えたことを客たちは知らない。
 
「あら、シンジちゃん、いらっしゃい。大きくなったわね」

「こんにちは。えへへ」

 この年頃の子供は大きくなったといわれるとやはり嬉しいものだ。
 確かに一年見ない間に確実に背丈は伸びている。
 しかも女将たちは前回シンジが来たときより、遥かに明るい表情をしていることに胸を撫で下ろした。
 母親が死んでいることをみな知っていたからだ。

「アスカもおぉ〜きくなったもん。シンジちゃんよりおおきいもんっ」

「わたしも。シンジちゃんよりこれくらいおおきいの」

 親指と人差し指で5cmくらいの寸法をレイは示して見せた。
 自己申告してもらわなくても3人並ぶとよくわかる。
 アスカが一番大きく、シンジとの背の差は7〜8cmはあろう。
 ワゴン車より全員が降り立つと、ゲンドウは少し離れた駐車場まで車を回す。
 旅館の親父がすると申し出ても、彼はいつもそうしている。
 それが彼の好意であることを最初は誰もわからなかった。
 それほど車を人に触らせたくないのかと寧ろ悪意を持たれたほどだ。
 しかし何度かここに泊まるうちに、単に感情表現が乏しく無愛想に見えるだけだとわかってきた。
 そうなると逆に彼の言動が微笑ましく見えてくる。
 出版社に勤めている甥っ子も、そういう人だから何分よろしくと笑いながら電話で話をしていた。
 だが、今日のゲンドウはいつもよりさらに険しい顔つきをしていたのだ。
 その理由はすぐにわかった。
 
 彼ら一行には隣り合わせの二つの部屋を割り当てていた。
 男3人用の標準のものと、女性と子供たち用のやや大きめの和室だ。
 まずは全員が大きめの方の部屋に通され、挨拶の儀式に入る。
 シンジにとっては見慣れた光景だが、キョウコとアスカ、そしてレイは初体験である。
 彼女たちはわくわくしながら女将の言葉や立ち振る舞いに見入っている。
 それがわかるから余計に女将も少し大げさに振舞ってしまった。
 
「すごいね、レイちゃん。テレビみたい」

「うん。すごい」

 幼女二人の囁き声というには少し無理のある話し声に、キョウコも心の中でうんうんと頷いていた。
 平机の一辺に幼児が3人並んで座り、出された熱いお茶には手を出せないでいる。
 すかさず手を出したアスカがその熱さに慌てて手を引っ込めたからだ。
 女将でさえも、外国人の接待はほとんどない。
 何しろ鄙びに鄙びた片田舎の温泉なのだ。
 元々は農閑期の湯治が主であったのが、徐々に温泉宿の形態を備え、観光案内誌の隅には載るようにはなっている。
 もっともその地方に他に載せるものがないから、温泉宿でも書いておけということのようだが。
 木造2階建てで離れや露天風呂も備えているが、この宿の逗留費用はかなり安い。
 それほど観光客が来ないということなのだ。
 しかしながらお客が大挙して現れれば、宿の方が困ってしまっただろう。
 商用や社用で、そして接待で使われることもなく、合宿などでも利用されない。
 それほどアットホームな宿だというわけである。
 したがって、外国人の姿などほとんど見る事がなかったのに、
 碇ゲンドウ氏が外国人の母娘を連れてきた。
 そして老人と婦人に色白の幼女。
 さすがの女将たちもどういう取り合わせなのか、まったく見当がつかなかった。 
 そこで女将は正面切って尋ねてみたのである。
 碇氏の住まう借家の大家とその孫と曾孫。
 人種が違うではないかと突っ込みを入れたかったが、何と血の繋がりがあるというから驚きだ。
 そして、彼の亡くなった妻の母親と姪の二人。
 何より驚いたのは、後から来る二人が、女医と警察官ということだった。
 「おししょ〜とひゅ〜がじゅんさなのっ」と真っ先にアスカが説明したのだがもちろんそれでは何もわからない。
 慌ててキョウコが「女医さんとおまわりさんなんですよ」と補足したが、さすがに彼女の口から女医の方はゲンドウの婚約者だとは言えなかった。
 どうしようかと思っていると、ゲンドウが居住まいを正した。
 群を抜いて背が高いだけに、その動きを見て他の人間も注目する。
 彼は眼鏡を指で押し上げると、細く息を吐いた。

「その赤木リツコという女性は…私の、その、つまり、そういうことで、うむ、困った」

 照れている。
 キョウコは畳にひっくり返って笑い転げたかったが、込みあがってくるものを必死に堪えた。
 なるほど、碇ゲンドウという男はこんな容姿なのに物凄く可愛らしいところがある。
 ただし男性としての魅力は日向マコトの1万分の1以下だが、と彼女は自分の物差しで計った。
 もしリツコならばマコトの方を100万分の1と形容したかもしれないが。
 恋する者に何を言っても仕方がないので、これについてはここまでとしたい。

「あのねっ、おししょ〜はシンジちゃんのママになんのっ」

「うん。リツコおねえさんはお父さんと結婚するんだよ」

 ゲンドウが言えなかった驚愕の事実をアスカとシンジはあっさりと漏らした。
 えっとばかりに、ゲンドウを見ると彼はハンカチを出して、おでこの辺りをしきりに拭いていた。

「まあ、そうでしたの?」

「う、うむ、そういうことだ。そ、そこで、つまり」

 ゲンドウは清水の舞台から飛び降りた。

「今日、ここでリツコと結婚したいのだが、問題ないか?」

 滅茶苦茶な日本語だが、意味は全員に通じた。
 子供たちは歓声をあげ、大人たちは拍手する。
 経緯のわからぬ女将たちも何はともあれ、笑顔で祝福したのだ。

 ここまではよかった。
 問題があったのは、彼の宣言の内容ではなく、宣言を現実化するための具体的なことどもである。



「ぐふふ、たんけんよ、たんけん」

「シンジちゃん、あんないして」

「うん、いいよ」

「ちょっとまったっ。あんないされたら、たんけんになんないじゃない。ばかシンジはアタシのあとからついてくんのっ」

「あ、うん。そうだね」

 幼き者3人は廊下で作戦会議である。
 何しろ部屋から追い出されてしまったのだ。
 急遽持ち上がった結婚式に対する会議がそのまま続行していったのだが、速やかに議事を進めるには子供の存在が不要だった。
 中でも口を挟みたがるアスカの存在が。
 そこで隣の部屋で遊んでなさいと追い出されたのだが、おとなしく部屋にいるわけがない。
 お茶やお菓子で旅館の和室にじっとしていられるような年齢ではないのだ。
 その作戦会議はすぐさま通りかかった若女将に見咎められたが、旅館から出ないことと他の部屋に入らない事を約束させられただけだ。
 それと走り回らないでね、と一番突っ走りそうなアスカに向かって言った。
 だが、胸を張って「だいじょぉ〜ぶっ!」と返されるとどうも不安である。
 そんな不安を胸に若女将は再び作戦会議に戻った。

 作戦会議の席上ではゲンドウが油汗を浮かべていた。
 本人としては散々考えた末での決断だったのだが、
 その考えというのは結婚するか否かという一点のみの回転木馬的思考だったから具体的にどうするというところにまで考えはいたっていない。
 したがって、トモロヲやハルナからの突っ込みに青色吐息となる。
 そもそも相手には伝わっていないのに、いきなり結婚式を決める乱暴ではないかという意見には肩を落としてしまった。
 しかし旅館にも迷惑がかかるだろうと言われた時には、女将が膝をぽんと叩いた。
 精一杯の祝宴を用意させていただく、新婚さんには離れの一室も使ってもらおうとの発言には
 さすがのゲンドウも深く頭を下げたのである。
 問題は結婚式だ。
 そして役割分担が決められていった。


 
 新婦たるリツコへの連絡は当然ゲンドウの役回りだ。
 当然仕事中の彼女に連絡を頼んだだけで、彼は背中にぐっしょりと汗をかいた。
 旅館の電話番号を間違えて伝えてはいないかと後になっても気もそぞろの小心者は、
 和室の縁側にある安楽椅子へ強制的に座らされてしまった。
 役立たずだからと、いうわけだ。



 リツコの母へはハルナが電話をした。
 さすがに個人開業医だけに電話はすぐに繋がる。

『あら、ハルナさん。用は何?』

 つっけんどんも極まれりといった感じの口調である。
 もっとも診療中なのだからこれも仕方がないだろう。
 それがわかっているだけにハルナは慌てて説明した。
 急な話だが、本日そちらの娘と碇ゲンドウ氏が結婚式を執り行うことになったと。

『聞いてないわよ。リツコから何も』

「それが…、まだリツコさんには伝わってないの」

 正直に伝えると、ナオコは「はっ」と短く笑った。

『わかった。暇だから参列してあげてもいいわ。詳しくは診療が終わってから連絡する。
 そちらの電話番号を教えて』

 ドライというか、合理的というか。
 一人娘の結婚式というのに彼女はぱっぱと言いたいことを言うと、さっさと電話を切った。
 携帯電話のアンテナなど1本も立たない場所である。
 もっとも携帯電話を持っているのはキョウコだけという時代遅れの一行ではあったが。



 キョウコは大きく胸を膨らませた。
 そして、一気に喋ったのである。

「こんにちは、惣流キョウコです。緊急連絡です。
 こちらの温泉で急遽碇さんとリツコさんの結婚式を行うことになりました。
 つきましては、マコち…」

 たんっ。
 キョウコは真っ赤な顔で電話を急いで切った。
 これで3回目の失敗である。
 どうも留守番電話には慣れない。
 最初はゆっくりと喋ったせいで20秒後にブーと鳴り、このメッセージで良いかとガイダンスが尋ねてきた。
 もちろんキョウコは溜息を吐いて消去の操作を行った。
 2回目は急いで喋ったので舌がもつれた。
 当然、それも消去処理がされたわけだ。
 そしてこの3回目では何とマコトさんと言う筈が、“マコちゃん”と口走ってしまったのである。
 慌てて電話を切ったものの、今の留守録は残ってしまったのではないかと顔面蒼白と顔面紅潮を繰り返す彼女であった。
 今回最も走り回らねばならないマコトへの連絡はまだしばらくかかりそうだ。



「ふむぅ、神主が入院中とな」

「はい。ですから何かあるときは隣町の神社から出張してもらっているのですが…」

 若女将は申し訳なさげに肩を落とした。
 この地区に唯一ある神社仏閣の宮司が入院しているのだ。
 そのピンチヒッターにはいきなり言われても無理だとすげなく電話で断られてしまった。
 何かしらの儀式をしないことには結婚式にならないではないか。
 結婚式を取り仕切る人物といえば、宮司、坊主、牧師に神父にその他諸々。
 その類の職業の人間が、間の悪いことに今日は一人もこの付近に存在しないのだ。
 さらに山奥の谷間に位置するこの温泉場には販売店と名がつくのは、
 煙草屋という看板で日用品や保存食を少しばかり並べている小さな店があるだけだ。
 貸衣装屋などもあるわけがないし、さすがに浴衣で結婚式とはいかないだろう。
 一行の中でもっとも格式ばっているトモロヲは何とか形式を取り繕おうと必死だった。



「おおおっ、あれはなにっ!」

「わかった、いのしし」

 ロビーのようになっている広い場所で、その隅っこに何かがいるのを見つけたアスカは大いに叫んだ。
 剥製の猪が窓際に置かれていたのだ。

「えっとね、あれははくせいっていうんだよ」

 自慢気にシンジが言う。
 最初に見たときは泣きべそをかいて父の背中に隠れたことはこの際秘密である。

「ちがう。あれはいのしし。はくせいじゃない」

「うんうん。ほんでみたわよ。レイちゃんのいうとぉ〜り、あれはいのししよ」

 剥製など知らない二人に嘘つき呼ばわりされても、シンジには余裕があった。
 
「えっとね、あれはいのししのはくせいなんだよ」

「だからはくせいってなによ!」

「あのね、しんだいのししの…えっと、なんだっけ」

 その時説明を受けたのだが、詳しいことは忘れてしまっていた。
 シンジはあははと愛想笑いを浮かべる。

「あ、わかった。ミイラね」

「おおおっ、ミイラおとこのきょ〜ふ?」

 ついこの間、お昼の名画劇場で『ミイラ男の恐怖』という古い映画をアスカとレイは見たところだ。
 シンジはそれに同席していないので、ミイラという言葉がよくわからない。

「でも、ほぉ〜たいでまかれてないわよ、レイちゃん」

「たぶん、じょうずにつくったのよ、このミイラは。
 あのピラミッドのミイラはできそこないなの」

「すごい!せかいのさいせんたんぎじゅつねっ」

 観光客もあまり来ない、片田舎の温泉宿に置かれた猪としては喜ぶべきかどうか。
 アスカはそっと剥製に手を伸ばした。

「だいじょうぶだよ。ぼくなんどもさわったもん」

「くわっ、ずるいんだ、シンジちゃんはっ」

「たたりはなかった?」

「え?たたりってなに?」

 レイは説明した。
 エジプトのピラミッドで発見されたミイラが博物館に運ばれ、そのミイラが甦るのである。
 そして王の墓を発掘した学者たちを一人ずつ殺していくのだ。

「へえ、そうなんだ。こわいね」

 アスカは不満だった。
 何故ならシンジは口ほどに怖がっていないからだ。
 彼女とレイは夏だというのに抱きつきあって、怖い映画を見ていたというのに。
 夜のトイレは母親同伴で赴いたというのに。
 それなのに、シンジはあまり怖がっていない。

「アンタ、そんなたいどじゃホントにたたられるわよ」

「えっと、だから、たたりって?」

 レイは少し考えた。
 なるほど彼女が話したのは映画のあらすじである。
 祟りの説明にはなっていないではないか。
 しかし、語句の説明など難しい。
 特に“祟り”のような言葉を幼稚園児が説明するなど困難極まりないではないか。

「したらいけないことをすると……、こわいことがおきるの」

「ミイラにいたずらしたら、しかえしされんのよっ」

 抽象的なものと具体的過ぎる説明と。
 シンジにとっては解釈不能だった。
 
「えっと、こわいしかえしされるから、ミイラにいたずらしたらいけないの?」

 一瞬、アスカとレイは頭を捻った。
 確かにその通りだが、どこか違うような気がする。
 アスカはぷうと頬を膨らませた。

「もうっ、シンジちゃんのわからんちんねっ!アンタにはたたりのおそろしさがわかんないのよ!」

「え、わからんちん?」

 時代劇で耳に留めた言葉などシンジにわかるわけもない。
 首を捻る彼に業を煮やしたアスカは、どかっと廊下に座り込んだ。

「アンタ、そこにすわんなさいよ。こわいはなしをしてあげるから、たたりのこわさをおもいしるのよっ」

「わたしもしてあげる」

「え〜、こわいのはいやだよ」

 などと言いながらも、素直にシンジは廊下に座った。
 まだ日も高いうちから、とある片田舎の温泉宿で百物語が始まったのである。



「え、ええっ、け、け、結婚式ですか!温泉で?」

 僕とキョウコさんの結婚式ではないですよねという問いかけは喉の奥に閉じ込めた。
 留守番電話にゲンドウとリツコの結婚式だとキョウコの声で録音されていたものの、
 多分冗談だろうと高をくくって温泉宿へ電話をしたマコトである。
 それが、キョウコからあれやこれやの説明を受け、休憩中の彼は驚いてしまった。

「ど、どうすればいいんですか、僕は」

『実はまだリツコさんに連絡が取れないの』

「えっ、新婦さんはまだ知らないんですか!」

『そうなの。碇さん、それはそれは…』
 
 そこでキョウコは一息ついた。
 吹き出してしまいそうだったからだ。
 部屋の電話がチリンと音を立てるたびに、縁側の安楽椅子から腰を上げるゲンドウの姿がおかしくて仕方がない。
 その光景が頭に浮かんだのである。

『ごほん、連絡がつかなくて。で、お願いがあるんです』

 咳払いでおかしみを振り払い、キョウコは本題に入った。
 恋する彼女にお願いと言われれば、マコトとしては奮い立たずにはいられない。 

「わかりました!で、私は何をすれば!?」



 マコトはメモ用紙を前に唸った。
 キョウコの依頼をまとめるとこうなる。

 1.温泉場にリツコとナオコの母娘を連れてくる。
 2.結婚式にふさわしい服装を用意する。最低限、新郎新婦は。
 3.結婚式を取り仕切る祭司を用立ててくる。
 
 マコトは瞑目した。
 そして、メモの端に小さく書き加えた。
 がんばれ、マコト!と。

 1については二人との連絡が取れれば大丈夫だろう。
 しかし2は?
 どういうものが要るのだ?
 ウェディングドレスにタキシード?
 キョウコさんは似合うだろうなぁ。ウェディングドレスは。
 僕は駄目だ。タキシードなんて着たらそれこそ七五三だ。
 ああっ、余計なことを考えずにこの難問を解決しないと!
 3は牧師?神主?マヤちゃんのお父さんに頼んでみるか。
 そうだ、それがいい。
 それがいいが、今どうすればいい?
 机から離れ派出所前で立ち番をしながら、目を彷徨わせ煩悶するおまわりさんの姿があった。
 それを目撃したのは通りがかった野良猫だけである。



「あら、結婚式?急な話ね」

『うむ、2時間前に決めた』

「シンジちゃんは?」

 リツコがすぐにそのことを考えたのは当然だろう。
 二人の結婚を妨げていた唯一の障壁がシンジの心だったのだから。
 
『問題ない。まったくない』

 ゲンドウにしては言葉数が多い。
 それだけ彼も舞い上がっているということだ。
 そしてリツコもまた舞い上がっていた。
 病院内で携帯電話は禁止なので彼女は関係者専用口から裏手に出ている。
 薬品会社などの営業や納品の人間くらいしか姿を見せない場所だが、リツコはそこへ出たところで携帯電話を始めた。
 しかし、今は彼女は建物の隅にいる。
 最初は幅5mほどの通路の真ん中で仁王立ちして電話をしていたのだが、徐々に建物に近づき、そして角で背を向けた。
 
「そう…、よかった」

『うむ。よかった。で、結婚して…くれるか?』

 白衣の背中がぶるっと震えた。
 それは感動したのか、笑ってしまったのか。
 いずれにしても彼への愛情が為せる仕草だったのだろう。
 そして、彼女の返事は…。
 今さら書くこともあるまい。



「ハルナさん。仲人はどうしようかの」

「宿のご主人に頼みましょうか?編集の方のご親戚のようですし」

「なるほどの。それしかあるかいか」

「おじいさまが頼むんですか?」

「馬鹿を言いなさい。私はただの大家じゃ。口出しする立場じゃない」

「ああ、そうでした。私がしないといけませんのね」

 ハルナは苦笑した。
 その通りである。
 ここは新郎新婦の縁者である自分が動かないといけないのだ。
 ついトモロヲの風格に安心してしまうというか、甘えてしまうのだろう。
 そこのところはさすがに城代家老の末裔というべきか。
 
「ところでアスカたちはどうしてる?」

「はい?」

 マコトと大切な話を終えた安堵感で、キョウコはすっかり気を安んじてお茶を啜っていたのだ。

「あっ、忘れてた!」



「ふりむくと、そのおんなのくちはみみまでさけていたのよ。
 それからいったの。わたし、きれい?って」

「おおおっ」

「ふぅ〜ん、きれいじゃないよね、くちがさけてるんだったら」

「ぐふううっ、シンジちゃん、もっとこわがりなさいよ!」

「そう。ぜんぜんこわくないの?」

 アスカとレイは不満この上ない。
 知っている限りの怪談話を披露しているというのに、その相手はまったく怖がらないのだ。
 寧ろニコニコして話を聞いているのである。
 
「はは、えっと、こわくないかな?」

「おもしろくないわね!アンタ、こわいものあんの?」

「う〜ん、レバーとか…」

「それはこわいのじゃなくて、きらいなもの。すききらいはだめなの」

 レイは胸を張った。
 アスカと出会ったころは好き嫌いの塊りだった彼女が、今はほとんど嫌いなものはないのである。
 逆にアスカの方がちらほら見受けられるくらいだ。
 因みにこの3人の中でレイだけがレバーを平気で食べられる。

「ぐふぅ、アタシもレバーきらい」

「あ、きょうのごちそうにはたぶんレバーはでてこないよ」

「ホントっ?」

「うん、まえにきじのレバーってでてきたけど、ぼくたべなかったもん。
 だからおとなのぶんしかでないとおもうよ」

「おっ、シンジちゃん、えらい!」

 アスカはニンマリと笑って、シンジの頭をよしよしと撫でた。
 彼女に褒められると何故だろうか。
 誇らしい気分になったり、物凄く嬉しくなる。
 シンジは嬉しげに笑った。

「ふたりともちゃんとたべないとダメ」

 レイはことさらに友達を睨みつけた。
 但し、睨みつけながらも剥製の毛並みを撫でている。
 これに乗りたいけど、多分壊れるわね。
 アスカちゃんが乗ってみようとしないんだから。
 レイの判断は正しかった。
 過去何度かそうしてこの剥製は骨折(?)したことがあったのである。

「あ、そうだ」

 話をそらそうとしたのではない。
 アスカは急に思い出しただけだ。

「いのししのおにくもでるかなぁ」

「えっ」

 レイは撫でるのをやめた。
 そして猪の剥製をそっと見つめた。
 表情のないその顔はとても可愛いとはいえない。
 しかし何となく彼女の好みに合っていたのである。

「たべるの?いのししさん」

「うんっ。ぼたんなべっていうんだよ!シンジちゃんはたべたことあんのよね」

「うん、でもよくわからなかったよ。ふつうのおにくのほうがおいしかった」

「ふぅん。まっ、おとなのあじってやつよ、たぶん」

 大人は残酷だとレイは思った。
 そして、猪の頭をよしよしと撫でながら、そっと「ごめんね」と呟くのだ。
 但し、どんな味がするのかしらともちらりと思ったりもする。

「よしっ、つぎはどこにたんけんしよっか?」

 探検ではなかった。
 入浴である。
 あまりに手持ち無沙汰なゲンドウを見かねて、子供たちを温泉に連れて行ってあげてと頼まれたのだ。
 誘いに来たゲンドウに、子供たちはこぞって歓声を上げた。



 午後3時。
 変則的ではあるが、マコトの勤務が明けた。
 温泉旅行へ駆けつけると聞いた先輩が、有給休暇を利用させていつもよりも早く退勤できるように計らっていたのだ。
 元々は1時に上がる予定だったのだが、3時まで働きますと宣言した手前、やっぱり1時にとも言えない。
 マコトはそういう糞真面目な(親友の言)男なのだ。
 挨拶を終えどたばたと派出所から駆け去っていくマコトの後姿を見て、初老の警官は表情を崩した。
 まだまだ子供だな、と。
 温泉に行くのがそんなに楽しいのか、とも。
 温泉旅行が理由ではない。
 愛しい人がそこに待っているからである。
 
 マコトはまず翡翠神社に向った。
 自転車を石段の下に止め、長い階段を駆け上がる。
 途中で休まずに駆け上がっていけるのは、警官として鍛錬を欠かしていない為か、それともキョウコに依頼されたことを何としても遂行する為か。
 明らかに後者だった。

「何ですと?そんなことをいきなり言われても無理ですな」

「無理…ですか。やっぱり」

「うちのマヤの友達ですからな、何とかしてあげたいものだが明日は早朝から地鎮祭もあるし、今晩は祭りのための会合もな」

 マヤの父、伊吹ダイノスケはすまなそうに説明する。
 
「しかし、いきなりの挙式ですな。この時期、なかなか難しいでしょう。暇な宮司を探すのは」

「はぁ」

 意気消沈するマコトを可哀相に思ったのか、ダイノスケは腕組みをして考えた。

「キリスト教という手もあるが、ほれ、ああいうところは日曜の朝に会合をしますからな。泊まりは無理」

「そうですね」

「おお、ならばいい手がありますぞ」

「えっ」

 俯いた顔を上げると、そこには邪悪に笑う宮司の顔が。

「坊主にさせればよい。ただし、どこの坊主でもいいというわけではないな。
 ほれ、隣の貧乏寺ならば暇を持て余しておろう」

「ぼ、坊主って、結婚式ですよ!」

 マコトの頭の中に結婚式の祭司として寺の坊主など欠片も浮かんでいなかった。
 浮かんでいれば真っ先に友人のところに駆け込んでいたはずだ。

「左様。おかしなところは少しもない。江戸時代までは寺の権威は凄いものだったかなの」

 江戸時代まではというところを強調してダイノスケは言う。

「お寺で結婚式…なんですか?」

 マコトはまだ得心が行かない。
 お寺は法事というイメージが強いのだ。
 何しろ生まれてこの方、シゲルやマヤと交友関係にあるが、シゲルの寺で結婚式など見たこともないからである。

「まあ、寺で、ではなく出張じゃの。経を読むかどうかは知らんぞ。
 ちょろっとそれっぽい経でも読んで、ありがたそうな説教でも垂れるんではないか?ま、坊主というものはそんなもんじゃ」

 嫌味タラタラである。
 マコトは呆れてしまったが、何とか表情に出さないように努める。
 どうしてマヤの父とシゲルの父はこんなに仲が悪いのだろうか。
 自分たちと同様に幼馴染で高校まで同じだったと聞く。
 しかも結構仲がよかったように見えたらしい。
 情報源は自分の母親からだ。 
 マコトの母は彼らと中学まで同じだったのである。

「そ、そうなんですか?それではシゲルに、あ、いや、龍巌寺に行ってみます」

「ああ、それがよい。おお、そうじゃ。いいことを思いついた」

「何ですか?」

「ふふん、こっちの話じゃ。さっさと行け。若造」

 あの優等生のマヤに比べて、この父親は柄が悪い。
 ところが宮司としての顔は殊勝なものだから余計にたちが悪い。
 ダイノスケという名前とは正反対に小柄で痩せている彼は、しっしと犬でも追い払うように手を振る。
 マコトはそれでも礼儀正しく頭を下げ、社務所を出た。
 マヤが留守でなければ、もう少し違った対応だったかもしれない。
 しかし、とにかく次の手に移らねばならないのだ。
 時間はない上に、温泉場で待つ人の期待に応えねばならないのである。
 重ねて言うが、ゲンドウとリツコのためではない。
 キョウコに頼まれたからだ。



「ああ〜ん?結婚式だと?この俺がか?」

 予想していた通りの反応だった。
 玄関口にどっかと胡坐をかいた坊主は面倒くさげに問い返してきた。

「わかってるよ。できないんだろ。そうならそうと早く言えよ。俺は忙しいんだ」

「ふむ、なるほどな。お主の意気込みを見ると、あっかちゃんの母君にでも頼まれたな」

 図星である。
 正直者のマコトは絶句し、その顔を見てシゲルは豪快に笑った。

「よしよし、まあ、あれだ。親父に聞いてくる。明日の法事をどうするかな」

「えっ、それって…?」

「俺も初めてだがな。まあ、親父が行くというかも知れんなぁ。温泉目当てに。はっはっは」

 狐につままれたような顔のマコトを残し、ジーパン姿のシゲルは奥へと歩いていった。
 今の言葉から考えると、寺の坊主が結婚式を執り行うということなのか。
 信じられない面持ちで、マコトは玄関口に腰も下ろさず突っ立ったまま待ち続けたのである。
 数分後、シゲルはにやにや笑いながら戻ってきた。

「よしっ、勝ったぞ!俺が行く。迎えは何時だ?」

「はぁ?勝ったって何だよ。って、それじゃ、坊さんがするのか?できるのか?」

「何を言うか。坊主にできないことはない。肉も食うし、女も抱くぞ」

 生臭坊主を前にして、マコトは最大級の溜息で応じた。
 心配この上ないが、ともかく祭司は手配できた。
 次は…。

「く、車だ!レンタカーが小さすぎる!」

「こら、礼くらい言って行け。礼儀知らずが。はっはっはっ」

 シゲルの戯言は聞いていなかった。
 マコトは門の前に立てていた自転車に飛び乗ると、駅前を目指して一目散。
 レンタカー会社に急がねばならない。
 予約していたのは軽自動車なのだ。
 彼を含めて4人の大人ではあまりに小さすぎる。
 しかも衣装なども乗せないといけないかもしれないのだ。
 大きな乗用車に変更しないといけない。
 彼はサドルにお尻をつけず、腰を浮かしたままペダルを必死に漕いだ。

「馬鹿だな。携帯電話は何のためにある?まあ、あそこがヤツの可愛いところだがな」

 この時、生臭坊主の顔は消え、幼馴染の笑顔がそこにはあった。



「おおおおおおおっ、ひっろぉぉぉ〜いっ!」

 わんわんわんわん。
 アスカの叫びは大浴場に響き渡った。
 但し、大浴場とはいえ、それは家族風呂と区別するために命名したわけで、豪勢な風呂ではない。
 真ん中に畳3帖ほどのタイルの風呂があり、一角に別の趣向の小さい風呂があるだけだ。
 しかし、惣流家の風呂しか知らないアスカにとってはその広さに目を見張るだけのものがあったのだ。
 それはレイも同様。
 二人の幼女はガラス戸を開けた場所で突っ立ったままで、中の様子に目を見張っている。
 先輩の余裕でシンジは偉そうな態度でその横を通った。

「じゃまだよぉ。はいれないじゃないか」

「うおっ、なんのあいさつもしないではいったわよ、シンジちゃん」

「だめね。れいぎしらず」

「しっつれいしますっ」

「おじゃまします」

 ぺこりと一礼して浴場に足を踏み入れる二人の後姿を見て、ゲンドウは微かに鼻で笑った。
 微笑ましいことこの上ない。

「さて、どうするか…」

 タオルを腰に巻くべきか否か。
 それともタオルで隠すだけにすべきか、どうどうと全裸で入るべきか。
 家庭風呂ならいざ知らず、温泉で混浴など経験したこともないゲンドウは悩んだ。
 そんな父の躊躇などまるで知らずに、シンジはタオルも持たずに浴場に真っ先に入ってしまっている。
 そして、先輩よろしく入り方をアスカとレイに教授しているのだ。
 おそらくはアスカの家の檜風呂への入浴法を伝授された時のことを思いおこしているのだろう。
 走り回ったら転ぶとかそういった類の他愛もない事をアスカとレイは神妙に頷きながら聞いている。

 ふん、それでも何分も経たないうちに走って滑って転ぶのだろうな。

 ゲンドウはふとそんなことを思いながら、風呂場へ入った。
 タオルで前を隠しながら。



「赤木先生。衣装はどうしましょう」

「別にいいんじゃないかしら。何ならみんな温泉に入りながらなんてどう?
 それなら衣装なんて関係ないじゃない。全員裸なんだし」

「だ、だ、駄目です!困ります!」

「冗談でしょ。真剣に慌てないでくれる?」

 真剣な顔で冗談を言わないで欲しい。
 マコトは恨めしげに赤木ナオコを睨んだ。
 みんな裸ということはキョウコも裸ということではないか。
 見たいけど、それは駄目だ。

「それはともかくとして、ドレスやタキシードはおかしいでしょう。仏式なんだから」

「先生は仏式をご存知なんですか?」

「知らないわ。結婚式をしたこともないし」

 そうなのだ。
 赤木ナオコは身重の状態で婚約者を亡くしたのである。
 結婚式どころか、葬式の後にリツコを産んでいるのだ。
 しかし彼女は皮肉でそんなことを言ったのではない。
 事実をありのままに言っただけだ。

「浴衣でもいいと思うわよ。こんなものは気持ちの問題じゃない」

 確かにそうだと、実はマコトも思っている。
 かねてから準備をしていたのならともかく、突発的に発生した結婚式なのだ。
 身内だけの祝言なのだから、形式じゃないだろうと糞真面目な彼でも割り切っているのである。
 しかし、キョウコがそう要求しているのだから彼としてはそれを遵守せざるを得ないのだ。

「しかし、そ、惣流さんが…」

「あら、あの頑固親父が。じゃ、仕方ないわね」

 惣流キョウコさんは親父にあらず。
 マコトの頭ではそうであるが、一般的に“惣流さん”と言えば惣流トモロヲを差す。
 そしてそのトモロヲは、町でも有名な頑固親父なのだ。
 
「でもリツコは晴れ着なんか持ってないわよ。私は作らなかったし、あの子も着たがらなかったもの」

「貸衣装で用意しましょうか。少なくとも新郎新婦だけでも」

「いらないわ。頑固親父は私が説得するから」

 ナオコはこともなげに言う。
 マコトなどは今でもトモロヲの前に立つと背筋が伸びてしまう。
 元市役所の部長だからではなく、城代家老の末裔だからではないかと思っている。
 日向家は元々御歩(おかち)組で御目見の身分ではない。
 (御目見=お殿様にお目通りできる身分)
 武士と言っても下級武士。
 江戸時代に培われた300年のDNAがマコトをして萎縮させてしまっているのか。
 かもしれないなぁと彼は苦笑していた。
 そんな友人にシゲルは呆れた目を向けている。
 馬鹿野郎、惚れた女の保護者だから身が竦むんじゃねぇか、と。

「もし晴れ着で結婚したという証拠みたいなものを作りたいなら、帰ってきてから写真屋にでも行って記念写真を撮ってもらえばいいだけのこと」

「ああ、なるほど」

「とにかく結婚してしまって…、あら、結婚したら、あの子、この家から出て行くのよね」

「だと、思いますが」

「困ったわ。これからの食事」

 マコトはもう相手にしなかった。
 彼は忙しいのだ。

「じゃ、レンタカーを取りにいってきます。途中でシゲ…お坊さんを乗せてきますので、服の方は相談しておいて下さい」

「了解。リツコもどうでもいいと言うと思うけど」

 ぷうと煙草の煙を吐くナオコに軽く会釈して、マコトは待合室を後にした。
 壁に貼られた“禁煙”という張り紙はいったい何なのだろう。
 ここで話をしていた30分ほどの間に、彼女は5本も吸殻を作った。
 もちろん灰皿などないので、それらはすべてコーヒーの空き缶に放り込まれている。
 駅前に向って自転車を進めながら彼は思った。
 やはり患者には禁煙しなさいと言い切るのだろうか、と。



「しゅりけん、しゅっしゅっしゅっしゅっしゅっ!あかかげはいっっくぅぅっっうっ!」

 ぱちぱちぱちぱち!
 可愛い小さな手の拍手が二つと、躊躇いがちにお愛想で拍手をする武骨な手が一つ。
 
「へっへっへぇ」

 満足げに笑うアスカが立っているのは、大浴場にある洞窟風呂。
 洞窟とはいうものの、奥行き僅かに3m。
 明らかに洞窟風の風呂と呼称すべきところだが、わざわざ文句を言うものなど居はしない。
 アスカとレイは逆に大いに喜んだのだ。
 シンジにあんなお風呂もあるよと指さされて、二人は目を見張った。
 壁に大きな穴が開いていて、そこがお風呂になっている。
 その窪みは洞窟を模して大人の膝ほどの深さしかない湯船であった。
 手前の方にだけ白熱灯の照明があるだけで、ぱっと見ただけでは奥まで見えない。
 二人の幼女はそこが入り口で、途方もない大迷宮がその奥に待っているのではないかと期待したのだ。
 しかしその期待は一瞬で、よくよく見ればすぐに行き止まりになっていることがわかった。
 期待しただけにアスカの落胆は大きかったのだが、それはシンジの一言ですぐに消し飛んでしまったのである。

「そこのなかでうたをうたうとね、まるでかしゅになったみたいになるんだよ」

 アスカの行動は早かった。
 すぐさま湯船に入ろうとして、レイに叱られる。

「アスカちゃん、ちゃんとあらってからはいるの」

「おっと、そうだった!えっへっへ」

 シンジから教えられた通りに、洗い場に積み重ねられている風呂桶を手にする。
 ケロリンと中に書かれた黄色い桶でお湯を掬うと、前をばしゃばしゃと洗った。
 これでいいでしょとばかりに澄まして笑うと、アスカは改めて洞窟風呂の中に。
 まずは奥まで進んで行き止まりをぺたんぺたんと手で確かめる。
 そして振り返ると、普通の声でシンジに質問したのだ。

「ねぇ、うたうってどぉ〜ゆぅ…」

 わんわんわんわん……。
 普通の声といってもアスカの普通である。
 レイならば大声と称してもよい。
 そんな空間で大声で喋ればどうなるか。
 反響しまくり、言葉を発した本人が一番驚いてしまった。
 もっとも驚いたのは数秒で、すぐにその効果に胸をときめかせたのだ。
 そして真っ先に歌ったのは、ケーブルテレビで大好きな昔の特撮番組の主題歌である。
 
 拍手しながらゲンドウは、他に客がいなくてよかったと思った。
 甲高い幼女の大きな歌声は耳を劈かんばかりである。
 シンジなどは露骨に両の掌で耳を蓋しているほどだ。
 しかしアスカはエコー効果にご満悦で彼の態度には気がついていなかった。

「つぎはレイちゃんっ」

「わたし、うたうの」

 きっぱりと言い、レイは洞窟風呂に進んだ。
 えへへと笑うアスカと、ぱんっと音を立ててタッチをし、彼女に指摘したとおりに前を洗い、そして奥まで進む。
 やはり奥がどうなっているのか気になるようで、アスカと同様にどんつきの壁を触りに行く。
 そしてぐるりとまわりを見回し得心がいったのか、うんと大きく頷いた。
 マイクもないのにあたかもマイクがあるかのように両手を顎の辺りに持ち上げる。

「いけっ、レイちゃん」

 ふふふと笑ったレイはいきなり歌い始めた。

「じぃ〜んせい、らくありゃ…」

 おい、水戸黄門か。
 ゲンドウは微笑んだが、顔の表には出てこない。
 温泉だけにいつものサングラスは外しているのだが、彼としてはそれが頼りなくていささか不安だった。
 眼鏡なしの顔はシンジにはよく見られているが、他人には素顔は見せたくない。
 自分を臆病者だと思い込んでいる、ゲンドウの他人への防壁。
 それがサングラスと髭である。
 余程心を許した相手にしか彼はその防壁を取り去らない。
 温泉に入るときもサングラスをつけたままが普通だ。
 それがこの時はレイとアスカに取り外すように命令されてしまったのである。
 「ああっ、シンジちゃんのパパったらおっかしいんだっ」「おふろにめがねはだめ」と言われた事に言い返せなかったこともある。
 だが一番の要因はレイの笑顔だった。
 ゲンドウが心を許した相手。
 シンジにリツコ、それと亡き妻ユイ。
 レイの微笑みに、そのユイの笑顔が重なった。
 伯母姪の間柄だからか、顔の作りが似ている。
 最近特にそう思うようになってきた。
 以前の無表情だった頃のレイを見ていてもそれほど感じなかったのだが、引っ越してきてからは違う。
 普通の幼児と同じように笑いはしゃぐ姿を見ていると、明るく優しくそしてふざけることも好きだった妻のことが思い出されてならない。
 だから、ゲンドウはレイに弱くなった。
 この時もお風呂に入るのだから眼鏡を外せと言われて、素直に従ってしまったのだ。
 もっともレイがそんなに言葉を発したわけではない。
 首を傾げて「おふろにめがねはだめ」と言っただけだ。
 要は、碇ゲンドウという男。
 惚れた女にはすこぶる弱い。
 これからも事あるごとにレイには甘い顔を見せることになるのだ。
 その甘い顔というのを見分けられる者は稀有であり、その稀有な人物であるリツコは苦笑するしかなかった。
 恋敵とはさすがに思えず、夫たるゲンドウを微笑ましく思うだけの事。
 いささか脱線したが、これは今より未来の話だ。
 まずはその二人に結婚してもらわねばならない。



「ど、どうして、マヤちゃんまでいるんだ?」

 普通の乗用車からワゴン車に契約変更してきたマコトは、龍巌寺の前に車を進めてきて大いに驚いた。
 人気のない場所では見慣れているが天下の公道ではまず絶対に見られない取り合わせである。
 何しろ、シゲルとマヤは自称ロミオとジュリエットなのだから。
 
「あのね、お父さんがお前も行けって命令するの」

「龍巌寺の馬鹿坊主に任せてはおけないそうだ。おい、マコト」

「何だよ」

「キリスト教とかイスラム教の関係者も探して連れて行かないか?こうなりゃ、ごった煮でいこうぜ」

「もう。拗ねないの。おかげで私たちも温泉に行けるんじゃない」

「プラス思考だな、おい。おまけがたっぷりなんだぜ。しかも仕事だ」

「あら、面白いじゃない。それに仏式の結婚式なんて初めてだもん」

「自慢じゃないが俺も初めてだ」

 マコトは周りを見渡した。
 人っ子一人いない、いつも通りの街並みだ。
 だからこそ二人も余裕で並んで立っているのかもしれない。
 しかも理由があって並んでいるのだから、周囲を気にしなくてもよいのだ。
 しかしながら、やはりどうしても背後の寺や神社に意識はまわってしまう様で、いつものような恋人同志といった風情は見受けられない。

「しかし、その格好で乗るのか?車に」

「向こうに浴衣はあるんだろ。旅館なんだから」

「そりゃああるだろ。でもな」

 溜息混じりにマコトはわが町のロミオとジュリエットを見やる。
 法衣を纏うシゲルに、巫女姿のマヤ。
 この姿の人間を車に乗せていくのか?
 まさか、赤木母娘は白衣を着ていくんじゃないだろうな…。
 マコトは少しばかり頭痛を感じた。



「はい、わかりました。お坊様がそう仰ったのですね」

 周囲にギャラリーがいるから、キョウコは堅苦しいことこの上ない受け答えになってしまう。
 マコトから旅館に電話がかかってきたのだ。
 参列者の衣装はそのままでも浴衣でもかまわない。
 新郎新婦だけは貸し衣装屋で調達する。
 寸法は新婦に確かめるから大丈夫だ。
 頑固親父への説得は、祭司をつかさどる僧侶の指示という形で行おうとマコトたちは決めたのである。
 ナオコなどに口を出させれば喧嘩になるかもしれないからだ。
 トモロヲからすれば年若なシゲルではあるが、仮にも龍巌寺の和尚(文字通り仮である。まだ正式に住職の座を譲られていない)なのだ。
 元々龍巌寺は大きな寺であり、江戸時代の中期までは藩主の菩提寺でもあった。
 それがある事件に和尚が連座したために、それからは龍巌寺の権威は失墜してしまったのだ。
 しかし寺は潰されずに済み、藩主の菩提寺でなくなっても惣流家など数軒の有力藩士はそのまま檀家で居続けている。
 それが証明だと在野の歴史研究家は口にしているが、真相は表にはいっさい出ていない。
 そんな古くからのつながりがある寺の和尚がそれでよいと決め付けるのだから、トモロヲはもう口を挟めなかった。
 
 さて、温泉旅館の人々は少しばかり慌てていた。
 仏式の結婚式など初めての経験だ。
 地元の若者が結婚するときに、この旅館を借りて宴席を張ることは何度もあった。
 しかし、よそ者がわざわざこの地で結婚式をしかも仏式で行うとは想像の域を遥かに越えていたのである。
 女将と若女将は何度となく膝をつき合わせ談判をし、特に料理の内容について検討に検討を重ねたのだ。
 元々は雉鍋をメインにしてというものであったのだが、結婚式の宴で鍋というのも変な話だ。
 一人ずつの膳に変更しようとしたが、突然の変更に加え、客が3人増えるということにも困った。
 ところが若旦那が再度の買出しに向おうとした時に、トモロヲの方から料理は鍋のままで願えまいかと申し出が来た。
 鍋を突付きながら式をするわけでもないのでと理由を言い、そして彼は苦笑した。
 実は子供たちが雉料理を楽しみにしているのでと漏らせば、気負いこんでいる女将たちも納得した。
 ともあれ、結婚式や宴の席にできるような広間はひとつしかないので、そこを使うしかない。
 女将はこっそりとトモロヲに、仏式の結婚式というのは何か準備するものが要るのでしょうかと尋ねた。
 すると彼はつるりと顔を撫で、「わしも初めてでの。さっぱりわからん」と言ったのである。



「おおきなくりのきのしたでっ」

「がんばれ、シンジちゃん!」

 シンジは頑張っていた。
 目の前に立つアスカとレイの声援を浴びながら、一生懸命に『大きな栗の木の下で』を歌う。
 頬を赤くして真剣な表情の彼は、まるで試験で歌っているかのように間違えまいと必死である。
 それほど熱くもない温泉だから、お湯で顔が上気しているわけではない。 
 そんな息子の姿にゲンドウの頬は緩んでいた。
 彼の方は大きな湯船の方に入り、そこで胡坐を掻いて子供たちの歌合戦を見物していたのだ。
 今宵は彼の二度目の結婚式となる。
 一度経験しているからといって、落ち着けるものではない。
 ゲンドウは歌合戦に集中することにより、迫り来る脅威から逃避しようと考えていた。

 思えば、ユイとの結婚もまた唐突なものだった。
 東京で同棲して数ヶ月、朝起き抜けにいきなり婚姻届に署名しろと迫られたのだ。
 子供ができたみたいだから医者に行く前に籍を入れたいとユイは言う。
 拒否すれば殺される。
 ゲンドウは観念した。
 何しろ朝ごはんの調理中で彼女は手に小型の包丁を手にしていたのだから、彼がそう思ったのは仕方のないところだろう。
 身なりを整え、友人に署名してもらい、そして区役所に行き婚姻届を受理してもらい、あっけないものだと笑い合った。
 そして、産婦人科の病院に行き、ゲンドウは大きな身体を小さくして待合室で待った。
 しばらく後に診察室から出てきたユイはえへへと笑い、子供のように舌をぺろりと出したのだ。
 ところが初めての子である碇シンジが誕生したのはその2年後だった。
 
 結局、あれはユイの策略だったのだろうか。
 それとも単純に勘違いだったのか。
 彼女は真相を胸に秘めたまま、あの世に旅立ってしまったのである。
 いつか互いに年老いた頃にでも訊ねてみようと、ゲンドウは思っていたのだが。

「ご、ごめん。2ばんおぼえてないんだ」

「ええっ、じゃっ、アタシがおしえてあげるっ」

 順番だと強制され、洞窟風呂に入ったシンジだったが、適当に思いついた歌は先日幼稚園で習ったものだ。
 覚えている一番だけでいいだろうと高をくくっていたのだが、アスカはそれを許さない。
 レイは一番だけだったのにとシンジは不平を漏らしたが、彼女たちが知る『水戸黄門』はテレビサイズだ。
 理不尽にもシンジの訴えは却下され、『大きな栗の木の下で』を最後までしっかりと歌う羽目となる。
 そんな哀れな息子の姿を見ながら、ゲンドウは鼻で笑っていた。
 しかし、碇ゲンドウは気がついていなかった。
 今苦労して歌っている愛する息子は、“順番”で歌わされているということに。
 


「何とかなりそうね」

 ハルナはキョウコに微笑んだ。
 温泉に到着してから、ずっとどたばたしていたような気がすると二人は笑い合った。
 但し、よく考えてみると、ああだこうだと皆で言い合っていただけで、キョウコはいえば電話番のような役目をあてがわれていたのだ。
 結局実際に動いているのは、第二陣の人々。
 いや、走り回っているのはマコト唯一人ではないのか。
 愛する彼の苦労を思い、もちろんそんな彼女の心情を気取らせぬように、キョウコは冗談めかしくそのことをハルナに告げた。

「そうね。おまわりさんも大変」

「こっちに来たら、ゆっくり温泉に浸かってもらわないと」

「あ、温泉。キョウコさん、今のうちに入っておきましょうか」

「えっ、もう?」

「ゲンドウさんたちものんびりしているみたいですしね。私たちも先に」

「お、女風呂ですよね。もちろん」

 キョウコは市役所の同僚に混浴風呂などというものもあると聞かされていたのだ。
 もちろんそれは温泉の知識がほとんどない彼女をからかってのものだったのだが。
 ハルナは声に出して笑い飛ばした。
 例え身体に自信があったとしても男と風呂に入るのは御免だと、彼女はさっさと浴衣の準備を始めた。
 そして安心したキョウコもまたハルナの真似をして、初めての温泉への準備にかかるのだった。
 古びた掛け時計を見ると、もう5時になっている。
 そろそろマコトたちが出発する時間だ。
 キョウコは安全運転で来てくださいねと心の中で祈ったのである。



「狭いわね」

 車に乗り込んだ、リツコの第一声がそれである。
 
「すみません」

 すぐに応じたのは後部座席の真ん中に座るマヤだった。
 せっかくのワゴン車だが、生憎大型ではない。
 横幅はややゆったりしているが座席は2列で定員は5人。つまり満員御礼というわけだ。
 
「文句があるなら後ろの荷物スペースにまわりなさい」

「だ、駄目です。それは法律違反です」

「警官が運転手だと何かと不自由ね。40km以上出さないし」

「制限時速ですから」

「拙僧が運転しましょうか?」

「おい、混ぜ返すな」

「シートベルト外していいか?この服装じゃきついんだ」

「いい加減にしろ。だったら着替えて来い」

「坊主がジーパンで到着など様にもならん」

「だったら我慢しろ。お前の服装が一番場所を取ってるんだ」

「はいはい」

 法衣姿のシゲルは生返事をして窓の方を見る。
 リツコが乗り込んできたものの車はすぐには発車しない。
 こういう時は運転手の性格がものを言う。
 慎重なマコトはリツコに走らせてよいかと確認した。
 そんな親友の姿にシゲルは微かに笑った。
 さてさて、制限時速内で焦りながら車を運転する男の補佐でもしてやるか。
 放っておくと神経過敏で何か仕出かしそうだからな。

「前方、子供の自転車あり」

「わかってるって。じゃ、行きますよ」

「ハンドブレーキ外せよ」

「今するところだったんだよ」

 マコトは嘘をついて、深呼吸をしながらハンドブレーキを解除した。
 


 トモロヲは浴衣に着替えて、男風呂へと歩を進めていた。
 気がつけば一行の中でただ一人残されている。
 もちろん、キョウコは「おじいさま、先にお風呂に入ってきますね」と声をかけてきている。
 その上でハルナと二人浴衣姿で歩いていったのだが、
 トモロヲとしてはその時、うむと頷いただけだ。
 石部金吉と役所で噂された彼だから、そこまで一緒になど気の利いたことも言えず、
 しばらくぽつんと客室で座ったままであった。
 そしてたっぷり10分ほど経過したと判断し(実はまだ3分も経ってなかったが)、彼も浴衣に着替えたわけだ。

「もうすぐ結婚式だというのに、まったく…」

 独り言など言ってはみるが、さりとて何をすることもない。
 だからこそトモロヲも風呂に向っているのだ。
 こちらが男風呂という矢印を追って、彼は背筋を伸ばして歩く。
 しばらく歩くと脱衣所の扉が見えた。
 『日付が変わると男女の風呂が変わりますからご注意下さい』との表示を見て、
 今日はこちらが男風呂だと看板でしっかりと確かめ、彼は戸をガラガラと開いた。
 脱衣所は無人だが、籠に衣服が何点か。
 ゲンドウと子供たちだと、トモロヲはしっかりと頷く。
 そして、ゆるゆると浴衣を脱いだ。
 大鏡にその痩身が映る。
 老いた身体に溜息を吐いた、その時だった。
 奇妙なお経が聞こえてくるのに気がついたのは。
 念仏は風呂場の方から聞こえてくる。
 不吉な思いにとらわれたトモロヲは曇ガラス戸をさっと開いた。

「ラはラララララ…」

 低音で呟くように歌っていたゲンドウは、その音にぱっと顔を上げる。
 洞窟風呂に座った武骨な男はトモロヲを見つけてさっと目を伏せる。
 それとともに念仏のような歌声も止まった。

「ああっ、やめちゃダメよぉっ!」

「またさいしょから」

「あ、あのさ、もうかんべんしてあげて。おとうさんがかわいそうだよ」

 大きな湯船の方に小さな頭が3つ浮かんでいる。
 ゲンドウは何度『ドレミの歌』を歌いなおしたことか。
 きっと天国の妻は笑い転げながらこの光景を見ていることだろう。
 そして、こちらに向っている新妻はこの事を聞くと、彼に抱きつきながら身体を大いに震わせるだろう。
 爆笑することなどできない彼女としてはひきつけたように、くっくと笑いを漏らし続けるに違いない。
 リツコには秘密にしておきたいが、この子供たちが黙っているわけがない。
 そう考え、開き直ってしまったゲンドウはニヤリと笑った。

「わかった。もう一度歌う」

 その男らしい態度を受けて、子供たちは歓声を上げる。
 その反応を楽しみながら、ゲンドウはトモロヲをしっかりと睨めつけながら唇を歪めた。
 なんという邪悪な笑みだ、と思ったのも束の間、とんでもない言葉が飛んできたのである。

「次は、大家さんですぞ。順番ですからな」

「順番…!」

 湯船の頭が3つ、方向を変えて、新来の男を見上げる。
 そして3人揃ってにっこりと笑うのを見て、トモロヲは観念した。
 何を歌えばよいのだ、わしは…。
 ぺしんと己の額を叩いた、その音が男風呂に景気よく反響する。

 結婚式まであとほんの3時間。 
 片田舎温泉は平穏この上なかった。


 








 
あっかちゃん、ずんずん 第十六巻 「あっかちゃん、洞窟風呂を堪能するの巻」 −おしまい−













 第十六巻です。
 すみません!準備だけで終わってしまいました!
 次回も一行は帰れそうにありません。
 洞窟風呂はこめどころ様他ご一行と赴いた、兵庫県のとある温泉宿のお風呂をモデルにしています。
 はい、私もぺたぺたと奥の壁を叩きましたよ。歌いませんでしたけどね。

 2007.09.06 ジュン





ジュンさんからあっかちゃん16話を頂きました。
今回は温泉三部作その2です。感想は最後にまとめてつけさせていただきましょう。

読者の方々はこちらから感想メールをジュンさんにお願いします


  最後に、またもや掲載が遅くなってしまったことを、ジュンさん及び読者の方々にお詫び申し上げます。
本当にすみませんorz


(2007/9/30掲載)


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