楽しかった温泉旅行から帰ってきた日のことである。
 旧姓赤木リツコと書きたいところだが、彼女と碇ゲンドウは結婚式を挙げただけで籍はまだ入れていない。
 だから、しばらくは赤木リツコ先生のままということになる。
 旅行からの帰り、リツコは惣流家の離れにある、父子が二人で住む碇家に直接赴いた。
 途中で赤木医院に乗りつけたのに降りたのは赤木ナオコただ一人。
 リツコが続いて降りようとすれば、母親にばたんと扉を閉められてしまったのだ。

「ちょっと、何するの、母さん」

「こら、嫁に行った娘がいきなり実家に戻る?」

「だって、私、何も荷物を。着替えも何もないじゃない」

「知らない。ほら、さっさと行きなさい。こんな大きな車は交通妨害よ」

 ナオコに促されて、ゲンドウはうむと頷きアクセルを踏む。
 狐につままれたような表情でリツコはそのまま車中の人となった。

「碇さん。家の近くで降りますか?私がレンタカーを返してきますから」

「いや、道ならわかる」

「レンタカー屋から惣流さんところまでけっこうありますよ」

 法衣を纏った青葉シゲルの援護とばかりに巫女姿の伊吹マヤも口を添えた。
 この姿の二人が並んで座っているところは何とも滑稽だが、恋人たちにとってみればつらい時間だった。
 本当はイチャイチャイチャイチャしたいところなのだが、人目を慮りそんな暴挙ができるわけはない。
 おとなしくシゲルは目を閉じ瞑想にふける真似をし、マヤの方は窓の外を眺めていたがやがて居眠りをしていた。
 意識を失ってしまうと身体は正直なのか、彼女の頭は自然と傍らの恋人の肩に。
 困ったなとシゲルは思ったものの、ここで騒ぐ方が余計に注目されてしまう。
 自分にそう言い訳をして、結局は恋人の体の感触を喜んでいたわけだ。
 市街地に入る頃にはマヤも目を覚まし、慌てて身を離し、小さな声で「ごめんなさい」と付け加える。
 そんな恋人にシゲルはうむと重々しく頷いた。
 この時、二人とも同じ事を考えている。
 何とかスケジュールを調整して二人で泊りがけの旅行に行きたい、と。

 さて、ナオコを降ろした後、結局ゲンドウは二人の勧めに乗った。
 何故ならシンジが完全に眠ってしまっていたからだ。
 この調子ならばレンタカーを返した後、駅前からずっとおぶって帰らないといけない。
 ゲンドウの体力から考えると大丈夫なのだが、やはり時間がかかる。
 それにリツコが一度元自宅に戻らないと夜勤の準備もできない。
 考えてみると残された時間はかつかつだった。
 ゲンドウとリツコは二人に申し訳ないと頭を下げ、惣流家の近くでレンタカーを降りたのである。
 そこから家まではほんの30メートルもない。
 ゲンドウはシンジを背負い、ゆっくりと歩を進めた。
 惣流家の門は使わず、裏手の勝手口から入る。
 そこの合鍵は借家をした時から預かっているのだ。
 ゲンドウは玄関の鍵をリツコに渡し扉を開けさせる。
 そこで眠れるシンジを預けると、彼は惣流家の母屋をぐるりと一周する。
 泥棒などの異変がないかどうか確認したのだ。
 異常がないことを確かめ、自宅に戻ると彼は驚きに目を見張り溜息を吐いた。

「おい、そんなに甘やかすな」

「ごめんなさい。つい、可愛くて」

「布団を敷いてくる」

 ゲンドウは苦笑しながらシンジの部屋に歩いていった。
 居間に残されたのは、リツコの膝を枕に安らかな寝顔を浮かべるシンジである。
 だって、仕方がないじゃないの。
 リツコは血の繋がらない我が子を見下ろす。
 シンジちゃん?もしかして君もあの年齢になったらゲンドウさんみたいになっちゃうのかしら?
 やがてシンジはゲンドウによって寝床へと移送された。



 シゲルは頭を抱えたくなった。
 いくら恰幅のいい風体を演出していても、そこは元々おっちょこちょいの気のある彼だ。
 ゲンドウにレンタカーを任せておけと言ったところまではよかったが、自分がこの格好でとぼとぼと歩くことは認識していなかったようだ。
 しかも今回はどこに人目があるかわからない市街地だ。
 マヤと並んで歩くわけにはいかない。
 だが、シゲルの寺とマヤの神社は隣り合わせである。
 歩く方向は同じなのだ。
 したがってシゲルの後方、3歩下がってではなく、3m離れてマヤが歩くという図式になる。
 傍目から見ると、晴れ渡った空の下、坊主の後ろを巫女が歩くという珍妙な絵柄となった。

「タクシーで帰ればどうだ」

「いやよ、もったいない。そっちがタクシーにすれば?」

「貧乏寺に何を言う。儲けている神社だから地域に還元しろ」

「儲けているんじゃなくて、ご利益があるの。わかってないわねぇ」

 まわりに通行人がいないと、こうした軽口も叩ける。
 人目は気になるが、この街ではこうやって歩くこともめったにできないのである。
 何しろ彼らは地域限定ご町内のロミオとジュリエットなのだから。
 狭いご町内のこと、二人が同級生で幼馴染であることは周知の事実。
 二人が恋人同士であることは当然知られてはいないが、こういう会話をしていてもおかしくはない。
 だが、二人の距離は家に近づくほどに離れていった。
 何故ならそれぞれ知り合いと出会うと世間話を交わさないといけないからだ。
 シゲルが檀家である長谷川のおばあちゃんに捕まった時がこの日の二人の別れとなった。



「1時45分にはここを出るわ。着替えをしないといけないし」

 台所で洗い物をするリツコの背中が言った。
 狭い台所から茶の間までの距離は短い。
 少し大声を出せば充分会話ができた。

「そうか。ではシンジには昼寝をしないようにさせないとな」

「あら、どうして?でも、あれだけ寝たのですから昼寝はしないでしょう」

 ゲンドウの意図はリツコを家から送り出すときにシンジも一緒見送るということだ。
 しかし、それを口で説明できる彼ではない。
 彼はリツコの問いに答えを返さなかった。 
 さて、車に乗っていた筈なのに目覚めた時に自分の部屋で布団に入っていたシンジはかなり驚いた。
 びっくりして部屋を出ると、茶の間で親の姿を見て安心した顔をしたのだ。
 昨日できたばかりの、新しい母親の笑顔もそこにあった。
 旅行のために食事用の素材は冷蔵庫に入っておらず、インスタント食品で昼を済ませることにする。
 しかし、シンジは思った。
 いつも父親が作ってくれているインスタントラーメンよりも美味しく感じるのはどうしてだろうか。
 彼の年齢ではわからないのも当たり前だ。
 父親は「いただきます」に対し、「うむ」と応えるだけだった。
 だがリツコは「はい、どうぞ」と返事をしてくれる。
 それだけのことが心を躍らせる。
 そこまでのことがわからないまでも、楽しく食事ができることは確かだ。
 普段のインスタントラーメンをシンジとリツコは丼で、ゲンドウは鍋から直接食べる。
 丼や茶碗は二人分しかなく、しかもそのひとつは子供用だ。
 
「勝手に揃えたりなんかしたら駄目よ」

「まさか…」

「みんなで買いに行きましょう。シンジちゃ…、ううん、シンジも一緒に」

 月の光幼稚園の葛城ミサト園長候補生という親友から子供の呼び方についてはレクチャーを受けている。
 自分の子供を敬称つきで呼んではいけない。
 甘やかさないという意味だけではなく、けじめの問題らしい。
 リツコは理屈の方はよくわからなかったが、彼女自身親が自分の子供に“ちゃん”づけで呼ぶことに不快感を持っていたので
それならば都合がいいと考えていたのだ。
 しかし、それでもいざシンジを呼ぼうとするとつい“シンジちゃん”と言いそうになってしまう。
 なるほど子供は可愛いものだ。
 例え自分の腹を痛めた子供でなくても、子供という存在自体が愛しい。
 しかし、ここでそういった感情に流されてしまってはいけない。
 確かに“シンジ”と呼び捨てにすることで、そして彼がそれを受け入れてくれれば、リツコとシンジの関係はよく深くなるだろう。
 しかもシンジ本人が気がつかない間に。
 この時もシンジはまったく気がつかずに会話に参加してきた。

「えっ、ぼくも?3にんでおかいもの?」

「ええ、3人でよ。ただ…」

 自分の事を何と呼ぶべきか、この時ようやくリツコは悩んだ。
 “ママ”?“お母さん”?よくわからないので、無難な路線で進むことにする。

「私はお仕事があるから。ゆっくりはできないかもしれないけど」

「うん!ねぇ、ぼくもなにか…えっと、えへへ」

 おねだりが下手だから、逆に巧いと言えるのか。
 瞬時にリツコは何かを買ってあげようと決めた。
 しかし、ここで約束するほど彼女のフットワークは軽くない。
 何しろ、新婚2日目。母親2日目。その上未同居の身の上なのだから。

「シンジ。おもちゃはいかんぞ」

「じゃ、ほん!ジェットアローンのほんはないかなぁ」

 ゲンドウはジェットアローンの存在自体を知らず、リツコは名前くらいしか知らない。
 ミサトならば知っていようが、リツコはテレビっ子ではなかったのだ。
 だから、つい問題発言をしてしまったのだ。

「そうね、私は知らないわ。でも、あっかちゃんに聞いてみたら?」

「あっ、うん!そうする!」

 その時、よもや新生碇家のお買い物にアスカがくっついてくるとは想像もできないリツコだった。
 そして、午後1時45分になる。
 リツコは碇家の玄関から足を踏み出した。

「いってきます」

「いってらっしゃい!えっと、おしごとがんばってね、おかあさん。えへへ」

 うわっ!
 リツコはその胸を射抜かれてしまった。
 明らかにゲンドウに向けられた愛情とは別物である。
 よくミサトが「アルコールは別腹!」と叫ぶが、これもその類かもしれない。
 
「わかった。いってくるわっ」

 リツコはきっぱりと言い切ると、ゲンドウに一度頷き勝手口の方に歩いていった。
 その背中を見送り、ゲンドウは苦笑した。
 おい、俺には言葉はないのか…?
 まあ、変なことなど言われたらどうしたらいいかわからんから、これでいいのか。
 などと、ゲンドウが自分を慰めていたときだ。
 勝手口のところでリツコがくるりと踵を返した。
 そして真っ赤に頬を染めて、じっとこちらを睨みつけている。
 忘れ物なら帰ってくる筈だが何なのだ?とゲンドウが頭を悩ます。
 時間にしてほんの数秒間だったが、その間に心の整理をつけたのか、リツコはその生涯初めての暴挙に出た。
 彼女の行為をしかと見届けたゲンドウは見事に固まってしまっている。
 そんな彼など目もくれず、耳まで赤くさせたリツコはあっという間に勝手口から外へ飛び出していった。

「おとうさん、いまのなに?」

「む…」

「おかあさん、こんなことしたよ」

 何も知らないシンジはリツコの真似をして、傍らのゲンドウめがけて投げキッスをした。
 それが何か、ゲンドウに答えられるわけがない。

「知らん」

 無愛想に言うと、ゲンドウは家の中に入っていった。
 舞い上がっていたので、上がり口で派手に膝小僧をぶつけて。
 呻き声を上げながら、邪心なき子供の追求から逃れようと彼は仕事場に急いだ。
 残されたのはわけのわからないシンジだけだ。
 シンジはアスカの真似をして肩をすくめた。

「わかんない、や。ぜんぜん」



 その頃、アスカとレイはワゴン車の後部座席で爆酔している。
 温泉から帰る途中のドライブインで昼食を採り、久しぶりのお子様ランチに二人の幼女は目を輝かせてとりかかった。
 駅前のあったショッピングデパートがバブル経済の崩壊に伴って閉鎖して以来、こういう洒落たものを食べるレストランがなくなってしまったのである。
 幼稚園の友人たちは家族でファミリーレストランに行ったり、マイカーでお出かけする機会があるのだが、
アスカとレイにはそういう場がほとんどない。
 ただでさえ子供の少ない街で、お年寄りを中心とした家庭に育っているのだから仕方がないことなのだ。
 しかし、そのことを二人とも不満に思ったことは一度もない。
 そういう意味ではアスカとレイがきちんと躾けられているのだという証明であろう。
 もっとも、その結果このようにお子様ランチひとつで大喜びするわけだ。
 それは見ていて、本当に微笑ましい限りなのだが、トモロヲやハルナには幾ばくかの悔みを覚えさせる。
 普通の家の子供ならばこういう機会がもっと与えられているだろうに、と。
 そんな年寄りの思いを他にアスカもレイもお子様ランチにご満悦だった。
 小さなチキンライスの山に立った国旗は二人を喜ばせた。
 アスカをアメリカ人と誤解したのか、彼女の方は星条旗が立てられていた。
 レイの方は日本の国旗だったが彼女は竿になっている爪楊枝を唇に挟んで綺麗にする。
 それを見習ってアスカも自分の星条旗を唇で拭って、ナプキンの上に置く。
 二人ともその国旗をお持ち帰りにして、ワゴン車に戻った。
 そして、お腹もいっぱいになったことでぐっすりとお昼寝と相成ったわけだ。
 騒音とはいかないまでも賑やかな音源が眠ってしまうと、車内は急に静かになった。
 トモロヲとハルナは眠っているのか、目を閉じたままじっと座っている。
 残るは運転手と助手席の人間だけ。
 運転手は居眠りなどできないが、助手席に座る金髪の女性は眠気など完全にどこかに置き忘れてきている。
 本当は運転をしている日向マコトの横顔をじっと見つめていたいところだが、恋人でもない彼女にそんな真似ができる筈がない。
 その上、背後の座席の祖父たちの目も怖い。
 そこで彼女はマコトに気取られないように、できるだけ座席を後ろにずらして視界に彼の姿が自然に入るように考えた。
 しかし彼女のその行為は逆に彼を悲しませたのだ。
 キョウコから彼に気づかれないように見えるということは、彼の視界からキョウコの姿があまり見えないということになる。
 もっともわき見運転は事故の元だと、マコトは自分を一生懸命に戒めていたのだが。
 だが、読者諸兄にも覚えがあろう。
 好意を持つ女性がすぐ隣に腰掛けているとき、男がどのように興奮し舞い上がってしまうものかを。
 マコトも普通の男性なのである。
 助手席にいるキョウコが気になって気になってたまらない。
 これで昨夜の宴会の記憶があればまだ彼女が隣にいることに少しは慣れているのかもしれないが、
何しろ昨夜のマコトは完璧に潰れてしまっていたのだ。
 だからマコトとキョウコを新郎新婦に見立てて、子供たちが結婚式ごっこをしたこともまったく記憶にない。
 もし意識があればこれに勝る幸福はないくらいであっただろうが、彼にとって不幸なことに覚えているのは
トモロヲに酒、キョウコに料理、そしてアスカにオレンジジュースをかわるがわる勧められたことだけだ。
 寧ろその場で嘔吐しなかったことを誉めてやってもよいほどである。
 ともあれ、彼は至近距離で恋しい女性が座っているのだという今の状況に緊張と幸福を必死に心のうちにとどめている。
 それがキョウコが身体を後ろにずらしているので、なかなか彼女の姿を見られないのである。
 もっともこれは交通安全にはよかったわけだ。
 もし常時左目の隅にキョウコの姿があったなら、今のマコトの精神状態では事故を起こしていたかもしれないからだ。
 見えない分だけ運転に集中していたことで、彼らのワゴン車は実に安全快適に走行していた。
 その上、出発早々にトモロヲが極めつけの一言を発したおかげでマコトはさらに誇りを胸に安全運転をしたのである。

「どうじゃ、キョウコ。さすがはお巡りさんじゃのう。わしらも安心して乗っていられる」

 祖父に話しかけられて、ただ頷くだけの態度で済ますキョウコではない。
 当然言葉で返さなくてはならない。

「ええ、本当に。海に行った時も、それはお上手でしたのよ。後ろでアスカたちが大騒ぎしていたのに」

 日焼け用のオイルをアスカが塗り大騒動になったことはトモロヲもよく知っている。
 そのアスカは不満気に声を上げたが、キョウコに叱責され口をつぐむ。
 どんな言い訳をしても悪いのは自分なのだから仕方がないことはアスカも自覚しているのだ。
 そうやって惣流親娘が明るい声を交わしている中、マコトは背筋をぐっと伸ばした。
 運転の上手な日向マコトとしては、何としてもその評判を落とすわけにはいかないからである。
 しかもあの時は助手席にいなかったキョウコが自分の傍に座っている。
 いいところを見せないと!
 男としては当然の気持ちであろう。
 こうして、彼らを乗せたワゴン車は出発から昼食、そして到着に至るまで首尾一貫した安全運転で走行したのだ。
 因みにゲンドウが運転した所要時間より、休憩時間を省いても1時間余計に掛かっている。
 そのことに文句を言う人間は乗っていなかった。
 アスカとレイはぐっすりと眠っていて、トモロヲとハルナは年齢の所為かゆったりとした運転の方が好ましい。
 そして、マコトとキョウコは。

「では、私はレンタカーを返してまいります」

 敬礼でもしそうな勢いでマコトが言う。

「ごめんなさいね。えっと…」

「日向君、荷物はうちであずかっておくからの。帰りに寄りなさい。ほれ、アスカはキョウコが運ぶのじゃ」

「いや!あの!私は!」

「どうせ帰り道ではないか。さっさと車を出さんと迷惑じゃぞ」

 トモロヲは後部座席にあった荷物をすべて車外に下ろしてしまった。
 こうなれば仕方がない。
 マコトは申し訳ありませんと一礼し、一人車を走らせたのだ。
 そして角を曲がった時、気がついた。
 自分の荷物とは小さな鞄ひとつだったことを。
 これはラッキーだと彼は微笑み、慎重にハンドルを握った。



「ねぇ、アスカちゃん、これしってる?」

 シンジが投げキッスをした。

「なに、それ?しゅりけん?」

 時代劇やヒーローもの中心のアスカには投げキッスなど当然わからない。

「ちがうよ。えっとね、リツコおね…じゃなかった、ははは、リツコおかあさんだった」

「ばかね。やっぱり、アンタはばかシンジよ」

「へへ、でね、リツコおかあさんがいってきますをしたときに、おとうさんにしたんだよ」

「ふぅ〜ん。なぞね、ぐふふ、ひみつよ、ひみつ。おししょ〜のひみつのこうげき」

「こうげきじゃないよ、たぶん。それにおししょうさまじゃないってば」

「ふんっ、アタシにはおししょ〜だもん!」

 帰る早々に、シンジが母屋に顔をのぞかせたのだ。
 父親は着想が沸いたとかで、仕事に取り掛かったので彼は暇をもてあましていたのである。
 そこにアスカたちが帰ってきたので、シンジはこれ幸いと相手を求めてきたわけだ。
 ところがアスカはキョウコの腕に抱かれて眠っていた。
 お昼寝中じゃ仕方がないねと彼が寂しそうに背を向けたとき、偶然アスカが目覚めたのだ。
 車の中かと思えばそこは我が家で、しかも母の腕の中にいる。
 幸福の絶頂の彼女だったが、「シンジちゃんが来てるのよ」の一言でさっさと床に下ろされた。
 一瞬不満気な表情を浮かべたが、目の前にシンジの後姿が見えたのだから気分はあっという間に切り替わった。
 即座に彼の背中に飛びつくと「あそぼぉ〜」である。
 そして今、二人は子供部屋にいるのだ。
 本当はジェットアローンの本のことを訊かないといけないのにシンジは忘れてしまっていた。
 それよりも彼らにとって不思議な投げキッスの正体の方が気になってしまっていたのである。

「でも、ふしぎなじゅつよねぇ。おししょ〜のしんへいきかしら?」

「どうかなぁ。おとうさんはおしえてくれないんだよ。しらないってさ」

「ううむ、ろくちゃんもしらないのかぁ。それはますますふしぎふしぎ」

 時代劇で覚えた言葉をそれなりに流用して喋るので、アスカの言葉はシンジにとっては尊敬に値する。
 まるで大人のように喋るからだ。
 投げキッスのことをゲンドウが照れて本当のことを言えないなど、幼児にわかる筈もない。
 アスカは投げキッスらしきものを何度も繰り返す。
 しかし彼女にはどうも手裏剣のイメージが強いようで、どう見ても口の中にあるものを手でもぎ取り投げつけている風だ。
 
「ちがうよ、アスカちゃん。もっと…こうだよ」

 意外と注意力があるシンジはリツコの動きをしっかりと真似をしてみせる。

「ん?こう?」

「ちがうよ。てはグーじゃなくて、えっとパーでもないなぁ。ゆびをくっつけたパー」

「え?それじゃパーになんないじゃない。へんなの」

「それから、リツコおかあさんはおとうさんにむかってしていたよ」

「むむっ、じゃ、ぶきじゃないわよね。ふ〜ふでしてるんだから」

「あたりまえだよ。たたかってるんじゃないんだから」

「うぅ〜んっと、じゃ、こう?」

 アスカはシンジに向かって投げキッスらしきものをしてみせる。
 しかし、やはりそれはあくまで“らしきもの”にすぎない。
 リツコがした投げキッスとはかなり違って見える。
 それがどうしてかをシンジはずばりと指摘できないので首を捻るばかりだ。
 
「ぐぅぅ、こうなりゃきくしかないわね。いくわよっ」

 アスカは子供部屋を飛び出し、シンジは慌ててその後を追う。
 どすどすと音を立てて廊下を歩く、アスカの姿はまるで小さな怪獣のようだ。
 トモロヲは自室で少し横になっていると引っ込んでいるので、今ではキョウコが鞄の中の物を片付けていた。

「ママ!これなにっ?」

 居間に入ったアスカはいきなり投げキッスもどきをする。
 しかし、普段のアスカに慣れてしまっているキョウコにはその動きが忍者の真似をしているようにしか見えない。

「こっちが訊きたいわ」

「しつもんしてんのはアタシ!しらないの?」

 キョウコは明るく笑った。

「知らないんじゃなくて、わからないの。アスカのしてることが」

「ぶう!ママのいじわる」

 情報量が少なすぎるとキョウコは言わなかった。
 
「時代劇?それともジェットアローンとか?」

「ちがう!おししょ〜なの」

「おし…、ああ、リツコさんね。これからはお師匠様じゃなくて、シンジちゃんのママにすれば?」

「ながいから。おししょ〜でいい」

「私はみんなから“あっかちゃんのママ”って呼ばれてるけど?」

 アスカの隣でシンジがうんうんと頷いた。

「ハルナさんのことは“レイちゃんのおばちゃん”って言ってるでしょう?」

「さいきんは、おばちゃんっていってるもん」

「あら、じゃ、ヒカリちゃんのところは?」

「みんなおばちゃんだよ。あ、そうか。どうして、おししょ〜だけママなの?むむぅ、ふしぎ」

 腕を組んでしまったアスカだったが、確かにそうだとキョウコは苦笑した。
 基本的に幼稚園の生徒の母親はみな“おばさん”扱いなのだ。
 彼女たちの中で若いキョウコでさえ、通り名は“あっかちゃんのおばさん”なのである。
 もっとも気の利いた者たちは“おばさん”から“ママ”若しくは“ママさん”と変えているのだが。
 仲のよい人は名前で呼び合っているのだから、キョウコ自身は“おばさん”扱いに何の依存もない。
 子供たちからすれば母親などおばさんも同然だと理解しているからだ。
 彼女がそんな風に呼んで欲しくないのはこの世でただ一人だけ。
 それが誰かなどといちいち書く必要もないだろう。
 その彼は一歩一歩惣流家に向かっているところだ。

「なるほど、リツコさんがしてたの。シンジちゃんのパパに」

 キョウコは腕組みをして、ふうむとばかりに目を閉じる。
 アスカとシンジは答えが出そうだと期待を込めて彼女を見上げた。

「ママ、わかる?」

 目をきらきらさせたアスカが問いかけると、キョウコはにやりと笑って目を開けた。
 ここであっさりと回答を言っておけば、この後の騒動はなかっただろう。
 しかし、キョウコはシャーロック・ホームズか明智小五郎を気取ってしまったのである。
 現場までは行けないので(そこまで動きたくはなかったから)、彼女は幼児二人を引き連れて玄関に出た。
 キョウコはがらがらと格子戸を開けて、門までを見通せるようにしてから振り返った。
 アスカとシンジは興奮を抑えるためか、仲良く手を握ってキョウコを見つめている。
 あらあら、いいわね。お手手握っちゃって。小さい子はいいわね。簡単にそんなことができるんだから。
 娘の行動に羨望を覚えながらも、名探偵に扮したキョウコはお決まりの台詞を口にした。

「さて…」

 『名探偵 みなを集めて さてと言い』
 こんなミステリ川柳をキョウコは知らなかっただろうが、やはりこういう場面では「さて」と言ってしまうのか。
 勿体ぶったキョウコは、わくわくを隠せないアスカとシンジの表情に満足した。
 満足したので、さらに彼女は悪乗りする。

「リツコさんは病院に、つまりお仕事に出るためにお外に行ったのよね」

「うん!ぼく、いってらっしゃい!っていったよ」

「それだけ?」

 アスカは鋭かった。
 手をぎゅっと握っているシンジに向かって、疑わしげな目をしてみせたのだ。
 根拠は何もなかったのだが、そんな気がしたのである。

「えへへ、あのね、それから、ぼくいったんだ」

「やっぱり!なに、いったの?」

「おしごとがんばってね、おかあさん、って。はずかしかったけど、いったんだ」

 シンジは照れて、顔を赤らめている。
 それを聞いて、キョウコは「シンジちゃん、よくやった!」と褒めてあげたかったが、
何分今は名探偵に扮しているのでここはなるほどと大きく頷くだけにとどめた。

「ふぅ〜ん、やればできんじゃない、アンタも。で、おししょ〜は?」

「わかった。いってきます。って」

「なぁんだ。それだけか」

「へへへ、でも、ぼくうれしかったよ」

 空いている左手でシンジは頭をかいた。
 キョウコはうんうんと頷く。
 間違いなくリツコさんはその時気分が高揚した筈だ。
 だから、子供の見ている前でそんなことをしたのだろう。
 名探偵は自分の推理に自信を持った。

「シンジちゃん、アスカ。間違いないわ。リツコさんがしたのはこれよ。今、やって見せてあげる」

 にこりと笑ったキョウコは右手の指先を唇に当てた。
 そしてより大きな音がするようにその指先を強く吸う。
 彼女は身体を捻り、子供たちによく見えるように玄関の隅に寄ると門に向かって大きく投げキッスをして見せた。

 ちゅぱっ!

 彼女の目論見通りに高らかな音を唇は奏でた。
 そして、その音と見えないキスはちょうど門をくぐってきた男を直撃したのだ。
 彼は眼鏡の向こうの目を大きく見開き、そして呆然と立ち尽くす。
 誰もいない筈の門に現れたのが誰かを認識した瞬間、キョウコは脱兎のごとく廊下を駆けていった。
 サンダルを履いたままでなかっただけまだよかった方だろう。
 彼女は自分の部屋にすっ飛んでいくと、襖をぴしゃりと閉め押入れを大きく開いた。
 そしてキョウコは自分の頭を押入れの上段に重ねている布団の間に突っ込んだのだ。
 布団に挟まった金髪の首は大声で叫んだ。
 その叫びは布団の圧力に消され、しかもドイツ語だったので誰にも訳すことはできなかっただろう。
 ドイツ語で恥ずかしいだのどうしようだの叫びながら、キョウコは両手でばたばたと布団を叩き続けたのである。
 その光景はとてもシュールでありながら、乙女の恥じらいといったものを体現的に示したものであった。

 さて、門に立ち尽くしたマコトはどうなったのであろうか。
 彼が回復したのはたっぷり3分はかかっていた。
 それも彼の周りでアスカとシンジが騒いでなければ、もっと時間が掛かっていたのかもしれない。

「マぁコちゃぁ〜ん!どぉ〜したの?」

「アスカちゃん、マコちゃんはだめだよ」

「いいのっ。ひゅ〜がじゅんさはうちではマコちゃんなのっ。アタシとママできめたんだから」

「うぅ〜ん、いいのかなぁ」

「だって、シンジちゃんのパパはろくちゃんじゃない。だから、マコちゃんでいいのっ」

 まったくもって理屈も何もあったものではない。
 しかしながら、微妙に正鵠を得ているところがアスカの凄いところだろう。
 本人はまったく気がついていないが。

「でも、どうしたんだろう?」

「うぅ〜ん、これはやっぱり」

 アスカは足を止めて腕組みをした。
 明らかに母親の真似をしているのである。

「あれはひみつへぇ〜きのしんへぇ〜きなのよ!」

「でも、おとうさんはだいじょうぶだったよ」

「それは…、ろくちゃんはてだれのものだからうまくよけたのよ」

「てだれってなぁに?」

「えっと、すごうでのにんじゃをしょ〜かいするときにつかうのよ」

 アスカは腰に手をやり、胸を大きくそらせた。

「このものはてだれのしのびでござる。さるとびさすけなのっ」

 この前に手に入れた忍者大図鑑の知識をアスカはシンジにひけらかす。
 小学校高学年用の本だったので、漢字が多くて振り仮名をたどりながらだったが、アスカは目を輝かせて今も読んでいるのだ。

「さるとび?さすけ?」

「くわっ、しらないの?じゃ。きりがくれさいぞうは?はっとりはんぞうは?ももちさんだゆ〜は?とびかとぉ〜は?」

 飛び加藤などというマイナー路線はもちろん、テレビの時代劇もほとんど見た事がないシンジなのだ。
 服部半蔵などというメジャーどころでさえ耳にしたことがない。
 彼は申し訳なさげに引きつった笑いを浮かべた。

「もう!ほんとにばかシンジちゃんねっ。こんどゆっくりおしえてあげるわ!」

「こんど?いまじゃないの?」

「ふふふ」

 アスカが変身したのは、悪の忍者かそれとも正義の忍びか。
 彼女はゆっくりと指先を自分の唇にもっていった。
 
「くらえっ!ひっさつ!ぷちゅぷちゅビ〜ム!」

 ビームではなかろうと突っ込みを入れる人間はそこにはいない。
 マコトのように固まってしまっては大変だと、シンジは慌てて逃げ出した。
 これ幸いとアスカは追いかけながら投げキッスを連発する。

「まてぇ!ばくふのいむめ!アタシはおんみつはっとりはんぞうだ!」

 この設定では幕府内の内紛模様になってしまっているが、そんな整合性など彼女は求めていない。
 楽しければよいのだ。
 ぎゃあ!と叫びながらシンジは門の周りから庭の方へ逃げ出した。
 
「おのれ!まてぇ!」

 アスカは手裏剣のように投げキッスを連発してシンジを追いかけた。
 その騒ぎの中、愛しいキョウコの投げキッスを直撃されたマコトが天国からようやく舞い戻ってきたのである。
 自分の周りで遊んでいるアスカたちの姿を見て、彼は状況だけは把握した。
 要は投げキッスを手裏剣のように見立てて遊んでいたのだ。
 それがたまたま自分が顔を覗かせたので、キョウコさんは恥ずかしくなって姿を消したのだ、と。
 大まかなラインでは正解だが、何故恥ずかしくなったのかという一番重要な部分がわかっていない。
 もっともそのような類のことに精通するような男性にはキョウコは決して好意を寄せなかったのだが。 

「でも…。ラッキーだったかな?」

 マコトは苦笑した。
 キョウコから投げキッスを貰うなど、一生に一度といっても差し支えないだろう。
 彼は奥に向かって訪問の挨拶をしたが、トモロヲは昼寝でキョウコは布団の間に首を突っ込んでいるので返事がない。
 そんな状況などマコトにわかる筈もなく、ただキョウコがばつの悪い気持ちでいるのだろうと思っただけだ。
 彼は投げキッスごっこに興じるアスカたちに声をかけ、玄関先に置いてあった自分の鞄を手にして帰っていった。
 メモ帳を一頁破り、短い書置きを残して。
 アスカを信用していないわけではないが、あんなに楽しそうに走り回っていると伝言など忘れてしまうことが多い。
 元子供のマコトには覚えがある。
 シゲルたちと汗びっしょりになって遊んでいた時に『お母さんによろしく』と知り合いの人に言われたことを3ヶ月も忘れていた。
 その人が家を訪れた時に思い出してびっしょりと冷汗をかいたが、向こうはそんなことは覚えていなかった。
 いや、覚えていない振りをしただけかもしれない。
 その時は大人の思いやりなど気づかずに、ただ助かったと思っただけであったが。
 ともあれ、マコトはアスカに伝言を。そして書置きも残して惣流家を辞した。



 伝言をすっかり忘れていたアスカのことは夕御飯の時に叱られた。
 それはマコトからの伝言だからではなく、誰かからの伝言という約束自体を忘れたことに対する叱責だった。
 書置きをしておいてくれていなければ、泥棒に鞄を盗まれたのだと誤解したかもしれない。
 真っ当な叱責にトモロヲは助け舟を出そうとは思わなかった。
 叱られたアスカは言い訳を考えたが、遊んでいるうちに忘れたという以外に理由はない。
 だから彼女は神妙にごめんなさいと謝った。
 今度日向巡査に会ったらきちんと謝るとの返事にキョウコはそれでよしと頷く。
 そんな母と娘の姿を傍らで見ながら、トモロヲは惣流家の女たちのことを思う。
 
 こんなに小さなアスカだが、叱られて涙を浮かべることもほとんどない。
 もちろん理不尽な叱責には悔し涙を浮かべることはあった。
 しかしあくまでそれは自分が悪いと思っていないからで、悲しいから泣いているのではない。
 その泣き顔も最近はあまり見ないではないか。
 いつの頃からか、ぐっと唇を噛み締めて泣くものかと耐えるようになっている。
 その表情はミキコそっくりだ。
 髪の目の色、目の色、肌の色、いろいろな要素は違うのに、その表情だけはそっくりだった。
 トモロヲの娘にして、反対された結婚を貫くために単身ドイツへ渡った娘。
 早くに夫を失ったというのに一人娘のキョウコを異国で育て続けた彼女は、一度もトモロヲに連絡をとろうとはしなかった。
 頑固さは惣流家の女の血統なのだろう。
 その頑固さを巧く御することができないと惣流家の男は務まらない。
 自分は務まっていなかったのだ、とトモロヲは深く反省している。
 そのことに気がついたのは、長年連れ添った妻が亡くなろうとする時だ。
 自分の知らないところで惣流サヤカはこっそりと娘と連絡を取っていた。
 そのことを妻の病床で知って、トモロヲは愕然としたのだ。
 ただ、ミキコがドイツでたった一人で娘を育てていることは彼には伝えなかった。
 それがミキコの望みだったのである。
 確かにその頃のトモロヲに教えても、また親子喧嘩になるだけの可能性が高かった。
 だから、サヤカが残したのはミキコの住所だけだったのだ。
 トモロヲはたった一度だけ、ミキコに葉書を送った。
 それは彼女の母親の死を告げたものである。
 その葉書に対して、ドイツからは紅茶の壜を送ってきただけだった。
 サヤカの好きだった銘柄で、箱の中にはただそれだけが入っていた。
 手紙か何かが入っているかとじっくりと検分したが何もない。
 失望した自分に苦笑したトモロヲはその後ミキコのことを忘れようと努めたのだ。
 そして、5年前のことだ。
 突然、国際郵便が舞い込んできた。
 トモロヲは読めなかったが、宛名はドイツ語で書かれている。
 そして、明らかに外国人が書いたと思わしいカタカナが添えられていた。
 ソウリュウサマ、と。
 彼はドイツからのものだと直感した。
 しかし、裏面を見ても何が書かれているのかまったくわからない。
 英語であろうがドイツ語であろうが、トモロヲには読めない。
 裏面には最後にまたカタカナが書かれている。
 判読すると“キョウコ”。
 それが自分の孫の名前とは知らなかったが、これもまた察した。
 彼は走った。
 不吉な葉書のように思えてならない。
 ドイツ語であるならば、読むことができるのは医者だ。
 トモロヲが駆け込んだのは赤木医院だった。
 昼の休憩中とあってナオコは待合室でタバコをふかしていたが、飛び込んできたトモロヲを見ても顔色一つ変えない。
 半ば脅すように葉書を突き出すと、彼女は咥えタバコで文面をさっと読んだ。
 そして、ただ一言だけトモロヲに告げたのだ。

「あなた、パスポートはお持ち?」

「何と?それより内容は?」

「持ってるの?持ってないの?早く言いなさい」

 年上のトモロヲ相手にナオコは返答を迫る。
 仕方なく彼は持っていないと返事をした。
 すると今すぐ取りに行けと命令してくる。
 今すぐミュンヘンに行かないと死んでも後悔するぞと脅してから、ナオコは葉書の内容を訳した。
 母親が急病で危篤である。できればドイツに来て欲しい。
 お願いしますと5回も書かれているんだぞとナオコは険しい表情で詰め寄った。
 狭い町内のこと、彼女も惣流家の事情はよく知っている。
 一人娘がドイツに家出をしていることや、その原因がトモロヲが娘の結婚を認めなかったことも。
 だからこそ、彼女は尻を叩いたのだ。
 日頃、大雑把な診療態度の彼女が医者として命令するのだと真剣に話す。

「死に瀕している患者がいるのよ。近親者はすぐに行きなさい」

 トモロヲは躊躇わなかった。
 短く礼を言うと、彼は医院を飛び出していったのである。
 結果から言うと、彼がパスポートを所持していなかったことが、ミキコの死に目に会えなかった原因だ。
 そのことで彼の出発は2日遅くなってしまう。
 ドイツに向かう機内から、葉書に書かれた病院に一番早く向かえるルートを検討をした。
 現地に詳しい人に尋ね、そのルートで急行したのだが、5時間遅かったのである。
 だからこそトモロヲは二度とその轍を踏みたくなかったのだ。
 それはパスポート云々という細かいことではない。
 結果を恐れて、娘と言葉を交わさなかったことだ。
 葬儀を終え、遺言通りに愛する夫の傍らにミキコが埋葬された時、トモロヲはアスカを抱くキョウコに声をかけた。
 二度と後悔しないために。
 
 しかし、もしキョウコがこの時心細い思いをしていなければどうなっていたか。
 今、こんなに元気で明るいキョウコを見るにつれて、あの時の初対面の彼女が別人のように思える。
 ベッドの脇に立ち、まだ乳児のアスカを抱きしめながら、目を真っ赤に嗚咽を漏らしていたキョウコ。
 おどおどとした態度で、それでも必死にトモロヲに何かを伝えようとする。
 彼女の身振り手振りでわかったのは、トモロヲがドイツに向かっているからと聞きミキコは必死にがんばったのだということだ。
 父親が来ると彼女は確信していたのだろうか。
 最後に彼女が呟いたのはドイツ語でなかったらしい。
 キョウコの伝えるそのニュアンスはトモロヲにある日本語をイメージさせた。
 ぼそりと彼の口から出た言葉に、キョウコはそれだと何度も頷く。
 ミキコは誰に向かってその言葉を発したのだろうか。
 
「ありがとう」

 トモロヲには何もわからなかった。
 彼は溢れる涙を拭おうともせず、じっと娘の死顔を見つめ続けたのである。
 意固地な惣流家の女の例に違わず、無理をして一人でアスカを育ててみせると言い張ったかもしれない。
 それを思えば、タイミングがよかったのだとトモロヲは神様に感謝した。
 仏様でもキリスト様でもよい。
 とにかく、自分とともにキョウコを日本へ向かわせてくれた神に。
 ただ、言葉が交わせるくらいにキョウコの日本語が上達したとき、彼女ははっきりと言った。

「おじいさまが泣いてくれたから。ママの最後の言葉を教えてくれたから。
 神様の導きではなく、おじいさまに導かれて、私とアスカは日本に来たの」

 惣流家の血筋であっても、キョウコが産まれ育ったのはドイツだ。
 コンプレックスの塊であった彼女でも物事をはっきりと言う習慣も持っている。
 トモロヲはキョウコの言葉を聞き、驚き、そして照れてしまった。
 しかし、その時からである。
 遠慮も何もなく、トモロヲがキョウコに話をするようになったのは。
 本音で語り合っても大丈夫ではないか。
 衝突することがあっても、納得するまで話せばどこかで妥協点が見つかる。
 外国語を話せないトモロヲだから、キョウコとのコミュニケーションは日本語でしかない。
 キョウコが日本語を習得するにつれて、町内で有名な頑固親父は少しずつ変化していったのだ。
 話せばわかる、頑固親父に。

 さて、そのキョウコだ。
 キョウコは書置きのメモを胸に抱いていた。
 時はもう既に深夜である。
 パジャマ姿の彼女は掛け布団の上に仰向けになり、マコトの書いたメモを何度も見てはその都度ニヤニヤと笑う。

『ありがとうございました。
 鞄を引き取っていきます。
 日向マコト』
 
 たった3行の走り書きが、彼女を有頂天にさせた。
 キョウコは勝手にこのメモをアレンジしてしまっている。
 キョウコさんへ…、ううん、キョウコへって呼び捨てにしてもらってもいい。
 キョウコへ。投げキッスをありがとう。マコト。
 ううん、どうせなら、僕のキョウコへ、で、君のマコトより、でもいい!
 ごろんごろんと布団の上で転がる彼女だが、妄想のもの哀しさはやはり心に付きまとう。
 うつ伏せになったキョウコはぼそりと呟いた。

「どうせ、想いは通じないんだもの。少しくらい夢を見させてよ」

 彼女は立ち上がると、照明の紐を引いた。
 真っ暗になった中、彼女は布団の中に入り、そして哀しげに笑った。

「おやすみ、マコちゃん。きゃっ」

 恥ずかしいなら口にしなければいいものを。



「なんや、それはなげキッスっていうやつやで」

「おおっ、トウジちゃん、ものしり!」

 月の光幼稚園の運動場でアスカはトウジを誉めそやした。
 しかし、トウジの方は馬鹿らしいという表情で投げキッスの説明をするのだった。

「あんな、うちはおかんがようやるんや」

「おんなけいじがっ?」

「そや。でかけるときにおとんにしよるで。おとんはいやがっとる」

「ほら!ってことはやっぱり、ひみつへ〜きかなんかなのよっ」

「ちゃうちゃう。あれはチュウや。チュウ」

「チュウ?たこちゅう?」

 アスカは唇を尖らせてみせる。
 それを見て、トウジはアホらしいと言いたげに溜息を吐いた。

「おまえら、テレビとかでみたことないのか?キスだよ」

 ケンスケが横から茶々を入れるが、そういう番組をテレビで見るのは彼の家くらいのようだ。
 トウジも合わせて、ケンスケ以外の他の5人はこぞって首を傾げる。

「あ、キス。それならしってる」

 レイがぽんと手を打って大きく頷く。

「おっ、レイちゃん!すごい!」

「ほら、けっこんしきのとき、おししょ…じゃなくて、シンジちゃんのママとおとうさんがしてたじゃない」

「あ!」

 アスカとシンジが同時に声を上げた。

「ちかいのキス!あれね!」

「なになに?キスがどうしたの?」

 目を輝かせて幼児たちの輪の中に入ってきたのは葛城ミサトだった。
 こういう話題には血が騒いでしまう、とても中年おばさん的嗜好の彼女なのだ。

「ミサトせんせ〜、したことあるの?」

「そりゃあ、もちろん!」

 勢い込んで答えようとした時に、特大の咳払いがひとつ。
 そちらを見ると、離れた場所にいる水野先生が幼児たちには笑顔で、そしてミサトだけに鬼のような顔をして見せた。
 さすがにベテラン教師。なかなか器用なものである。
 幼児相手にどこまでの性教育を考えていたのかは知らないが、ミサトは大きく方針を変更した。
 大嘘を吐く事にしたのだ。

「もちろん、してないわよ。この私はまだ結婚してないもん」

 ミサトはこれならいいだろうとばかりに胸を張って突っ込みどころ満載の発言をする。
 すると、早速ケンスケが食い付いた。

「でも、けっこんしてなくてもキスはするぞ」

「わっ、ケンスケちゃん、したことあるの?」

「ないけどさ、こいびとってのでもしてるぞ。テレビでみた」

「おおっ、アタシもみた、みた!じだいげきでしてた。みぶんをかくしたわかとのとまちむすめがぶちゅぅ〜っと!」

 アスカは唇を尖らせて蛸のようなひょっとこのような珍妙な顔をする。
 
「おっ、それからどうなった?」

 見習いだからといい筈はない。
 ミサトの突込みに対して、あっという間にやってきた水野先生は持っていたバインダーでばこんとミサトの頭を叩く。

「いったぁ〜い。暴力教師」

「いい加減にしなさい。小さな子に変なこと教えないの」

「教えてないじゃない。むしろ教わってるの」

「誘導してるのは誰よ。馬鹿ミサト」

 小さな声でやりあう二人には眼もくれず、アスカは腕組みをして残念そうな声を上げた。

「そこでテレビをけされたの」

「おじいちゃんに?」

「ううん。ママ」

 ヒカリの質問にアスカはすぐに返事をした。
 あの時は台所にいたキョウコがつかつかと小走りにやってきて、テレビの主電源を消していったのだ。
 内容がどうこうではなく、見ていた番組を強制的に消されたことにアスカが文句を言ったが
キョウコは知らぬ顔でじろりとアスカではなくトモロヲを睨みつけていた。

「いや、これはじゃの。仕掛人とかそういう類のものではないのじゃ。これは…」

「しりません!」

 アスカはキョウコの真似をした。
 腕を組んで顎を上げ、一声高く叫ぶとくるりと背中を向けてずんずんと歩いていく。
 ちなみにキョウコはずんずんとは歩かずさっさと歩いていったのだが、アスカにはその真似ができない。

「わしんとこも、ちゅうのばめんになったらテレビをけされるで」

「おかあさんに?」

 ヒカリの質問にトウジはすぐに返事をした。

「おとんや。おかんはなんでけすんやって、おこっとった」

 それは確かに鈴原家の風景には似つかわしい。
 ミサトはなるほどとばかりにうんうんと頷く。
 偉丈夫の奥さんに物静かなご主人。
 あれはあれなりに見ていて和んでくる夫婦だ。
 
「ミサトおねえさん、どうしてちゅうはこどもにみせないの?」

 素朴な疑問をストレートにレイは口にした。
 ミサトはウイットの利いた返事をしようとにんまりと笑ったが、またもや水野先生の咳払いがする。
 わかってるってばと、ミサトは水野先生にうんうんと頷いてから、「あのね」と切り出した。
 まさかそこから幼い二人に未来絵図を示すことにつながるとは思いもよらずに。

「ちゅう…、えっとキスっていうのはね、将来を誓った二人がするものなの。
 将来って言うのは結婚するってことね。恋人がするのは、この人と結婚したいって決めているからなの」

 レイは首をかしげた。
 これでは先ほどの返事にはなっていない。
 ミサトはどうやってこじつけようかと頭を捻った。

「でもって、子供に見せないのは…」

 あ、そうだ。私って天才!
 ミサトの頭の中でひらめきが生まれた。
 リツコが傍にいれば、また騒動が始まると直感しただろう。
 それほどミサトの直感というものは人騒がせなのだ。
 そしてそのパターンは今回もまた当てはまるのである。

「つまり、子供がキスの真似をしたらだめだからなのよ。
 ほら、まだ小さいから誰と結婚するかどうかなんてわからないでしょ。
 それなのにテレビの真似をして誰かとチュウとかしたらまずいじゃない?
 だから、みんなのお母さんたちはテレビとかにそういう場面が出てきたら慌てるわけよ」

 ミサト、グッジョブ!
 自分で自分を褒めるという時ほど、大抵しっぺ返しが来るもので。

「どうしよう。わたし、おとうさんとちゅってしたことある。ずっとまえだけど」

 ヒカリがうろたえた。
 ケンスケも昔お母さんにやられた記憶があるとこわばった顔をしている。

「そ、そ、それは、ははは!親とか兄弟とか親戚は関係ないのよ。
 ほら!外国の人って挨拶でキスするでしょ?ねっ、あっかちゃん!」

「アタシ、にほんじんだからしらない」

 きっぱりと言い切ったアスカは、それはもう真剣な表情でミサトに問いかけた。

「おやとかじゃなかったら?アタシ、そいつとけっこんしないといけないの?」

「えっ、あ、あのね、まさか…」

「アタシ、きのう、なげキッスをしたの。シンジちゃん、なんぱつもくらったわよ」

 アスカの隣でシンジがうんうんと頷く。

「アタシ、シンジちゃんとけっこんしないといけないの?」

「な、投げキッスだったら、大丈夫!それはセーフ!」

 ほっとしたミサトが大袈裟に手を広げると、また脳天にバインダーの鉄槌が下った。

「また、もう!みんな、この人の言った事は嘘ですからね!冗談!忘れなさい。
 キスは子供のすることじゃないから、おうちの人が見せなかったの。それだけのことだから」

 水野先生の気苦労も大変である。
 なんだ冗談かと園児たちはこの話題からいつしか離れていった。
 アスカもでは投げキッスは問題ないのかと納得したのである。
 しかし、レイは違った。
 キスがどうこうではなく、友人が約束を忘れてしまっていることに憤慨したのだ。
 幼稚園から帰り服を着替えると、レイは「あっかちゃんのところにいってきます!」と言い残し家を出たのだ。
 アスカはずんずん歩くが、レイはすたこらと歩く。
 私がやらねば!と使命感に燃えた彼女は一目散にアスカの家を目指した。
 レイの足で徒歩7分。
 何の障害物も現れず、彼女は惣流家に到着した。
 子供部屋のアスカはまだ着替えているところである。

「うわっ、レイちゃん、はやい!」

「アスカちゃん、おもいだしなさい!」

「へ?な、なにを?」

 何を思い出すのだろうか。
 アスカはホットパンツを履きながら、思い当たるものを探す。
 遊ぶ約束?ちゃんばらごっこ?ジェットアローンごっこ?
 一生懸命に何かを思い出そうとするが、その何かが簡単に見つからない。
 着替え終わったアスカはどすんと畳の上で胡坐をかくが、いくら考えても思いつかないのだ。

「わかんない。なにをおもいだしたらいいの?」

「けっこんのやくそく」

 レイは真剣な眼差しでアスカを睨みつけた。

「アタシとレイちゃんが?」

「ばか。おんなのこどうしだからむり。ほんとうにわすれているのね。アスカちゃんのばか」

 レイは熱く燃えていた。
 
「だって…。あ、シンジちゃんのこと?あはは、なげキッスはかんけ〜ないっていってたからだいじょうぶじゃない。
 アタシとシンジちゃんはけっこんしないでいいの。あははは」

「アスカちゃんのばか」

 こんなに馬鹿をレイに連発されたのは初めてである。
 彼女が真剣に怒っているのを察して、アスカは慌てた。
 これではシンジが父親の再婚を拒否していた時と同じではないか。
 あの時もレイはシンジに対して怒り狂っていた。
 そのことを思い出させるくらいに目の前のレイは憤怒に燃えている。

「やくそくをまもらないなんて、そんなのアスカちゃんじゃない。やくそくをまもるのっ」

「や、やくそくって、どんなやくそく?」

 レイは畳を踏みにじるように足に力を入れた。
 親友は完璧に忘れてしまっている。

「アスカちゃんはジャンケンにまけたでしょ!」

「はへ?」

 アスカの頭の中はもう大混乱である。
 何がこんなにレイを怒らせているのか。
 ジャンケンに負けたというが、レイは物凄くジャンケンに弱いではないか。
 そこまでは思い描けるのだが、もう一歩踏み込んでいけない。
 ジャンケンに弱いレイに負けたときはいつだったのかを思い出せばいいことなのだが、
目の前で地団太を踏んでいるレイの姿があまりに強烈で、アスカは思考がまとまってくれない。
 それほどレイに圧倒されているのだ。

「ばか、ばか、ばか、ばかっ。やくそくをまもらないアスカちゃんなんてきらい」

「ええっ、やだよぉ、きらいになんかならないでよぉ。しょ〜がいのともじゃない、アタシとレイちゃんは」

「だったら、さっさとけっこんしたらいいの。シンジちゃんと」

「へ?」

 この時アスカはアニメの一休さんになりたかった。
 あんな風にすればレイの言っていることが理解できるかもしれない。
 アスカがすべてを思い出すまでに、まだ10分以上の時間が必要だった。



 しかし、アスカが思い出しても、この騒動はそれで終わらなかった。

「うぅ〜、そうだった。アタシ、シンジちゃんとけっこんしないといけなかったんだ」

「そうよ。わすれてはだめ」

「えっと、けっこんしないとだめ?」

「ぶしににごんはないんでしょう?めっ」

 レイに睨まれ、アスカはがっくり肩を落とす。
 
「それになげきっすもしたのよ。ふたりはけっこんするの」

「ぐふぅ〜」

 足を投げ出したアスカは、仰向けに転がって大きな大きな、それは大きな溜息を叫んだ。
 普通は吐くものだが、この時ばかりは叫ぶという方が正しい。
 
「あきらめるの。これはきまったことだから」

「ふわぁ〜…。よしっ、あきらめた!」

「あら、ふふ。じゃ、きまりね」

「そ〜りゅ〜アスカはぶしでござる。あきらめがかんじんって、えらいおぼうさんもいってたもん」

「りゅうがんじの?」

「ううん!テレビのじだいげき」

「やっぱり」

 レイは見事なほどに微笑む。
 この微笑にアスカは弱い。
 その笑顔を見ながら、アスカは起き直った。

「ま、いっか。シンジちゃんとけっこんしたら、おししょ〜もママになるもんね。ぐふふ」

 そのアスカの独り言にレイが食いついた。

「アスカちゃん、おかしい。アスカちゃんにはおかあさんがいるじゃない」

「ん?だって、けっこんしたら、えっと、なんだっけ、つまり、あれよ、ママとパパがふえるの」

「ふえる?どうして?」

「ん〜、わかんないけど、じだいげきでもそうよ。
およめにいったら、むこうのいえのひとにこれからはわたしをほんとうのははとおもい…うんちゃらかんちゃらって」

「いまも?」

「うん。そうだよ。おじいちゃんがわらっていってたもん」

 赤木ナオコは随分と年の食った息子ができたもんだと、トモロヲは昨晩大笑いしていたのだ。
 そしてその意味がわからないアスカが質問して、義理の親というものが結婚すればできることを知ったのである。
 アスカがその説明をすると、レイは腕組みをして考え込んだ。

「どしたの、レイちゃん?」

「アスカちゃん…」

 レイは鼻からぷふぅと息を吐き出した。
 かなり興奮しているようで、瞳がぎらぎらと光っている。

「アスカちゃん、シンジちゃんとけっこんしなくていい」

「へ?いいの?」

「いい。しなくていい。シンジちゃんとはけっこんしちゃだめ」

「なんだ、いいんだ。あ、わかった、レイちゃん、おししょ〜をママにしたくなったんでしょ」

「アスカちゃん」

 レイは1歩前に踏み出す。
 アスカは座っているので、見上げる角度をぐっと上げる。
 後ろにひっくり返ってしまいそうなので、両手をつっかえ棒にして身体を支えた。
 何しろ物凄い迫力である。
 こんなレイを見ることはなかなかできない。

「な、なぁに?」

 思わず可愛らしく返事をしてしまうアスカの気持ちもわかる。
 さすがに刺激してはいけないと本能的に察知したのだろう。

「アスカちゃんとけっこんするのは…わたしなの」

「げっ」

 女の子同士だから結婚はできないといったのはレイではなかったか。
 じっと睨みつけてくるレイに、逃げ場を失ったアスカはただ愛想笑いを浮かべるしかできなかったのである。


 




 
あっかちゃん、ずんずん 第十九巻 「あっかちゃん、ぷちゅぷちゅビ〜ムを会得するの巻」 −おしまい−


















(あとがき)

 第十九巻です。
 作品中の時間の進みがどんどんおそくなっていってます。
 レイが何故アスカと結婚したいかはすぐにおわかりでしょうが、そのレイの欲求が新たな展開を呼ぶのです。
 さて、リツコおかあさんは夜勤明けにどこに帰ればよいのでしょうか。
 ああ、作品中には書いていませんが、彼女はかわいそうに朝の交代で帰る事ができず、3時まで残業させられています。
 総合病院のお医者様は大変なのです。
 

 2008.06.20 ジュン




(2008/7/13掲載)


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